バルミューダ、スマホ事業撤退 失敗の根本はどこにあるのか本田雅一の時事想々(3/3 ページ)

» 2023年05月16日 12時00分 公開
[本田雅一ITmedia]
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今後は強みを生かしたテック製品づくりへ

 しかし、これでは初代モデルの進化版でしかない。第一世代モデルにおいて、製品の企画・開発側と消費者の間にミスマッチがあったことが、互いに困惑している理由に他ならない。すなわち、第二世代モデルを作るためには、バルミューダが製品に込める思いと消費者が欲しいと思う要素、両者の情熱が重なる何かを求めての方向転換が必要なはずだった。

honda バルミューダと消費者の、情熱が重なる何かを求めての方向転換が必要だったが……

 その何かを求めて開発が進められ、関連する人員の雇用も進めていたのだから、寺尾社長が第二世代モデルの開発に本気だったことは間違いないだろう。第一世代モデルはソフトバンクが最低の買い取り数をコミットすることでバルミューダを支援していたはずだが、その失敗の大きさから第二世代モデルで同様の取引が可能だったとは想像しにくい。言い換えればバルミューダ自身で、第二世代モデルの開発リスクを背負う覚悟だったのだと思う。

 最終的に23年1〜3月期に5億3600万円の特別損失を計上することで事業を清算することを選択したが、同社のダメージはこの数字以上に大きい。決して先進的な技術を強みとしていたわけではないが、鳴物入りで投入した製品ジャンルで発売から2年を経過せずに撤退。サポートも2年間で終了するという事実はブランドを毀損(きそん)しかねない。

 あらためて確認するまでもないが、販売時に機能や価値が固定されており、購入後はハードウェアとしての製品寿命を迎えるまで、初期の機能を提供し続けてくれる家電製品と、スマートフォンのようなテック製品は“価値の生み出し方”が異なる。だからこそ、バルミューダ製品はネットサービスやアプリに依存するIoT製品を作ってこなかったのではないか。

honda 家電製品とテック製品は“価値の生み出し方”が異なる

 そうした意味で、寺尾社長はバルミューダ製品、ブランドの持つ価値や位置付けを正しく認識し、その領域から踏み出さないという賢い選択をしてきた。ちょうど同じ時期にソニー系子会社のQLIOがスマートロックの第一世代モデルをサポートから外すことを発表していたが、寺尾社長は同様の事態を避けるための選択をしてきたともいえる。

 それだけに、第一世代モデルの評価が確定した後にも「独自アプリなどで差別化を」と話していたこととの矛盾が気になるが、同社は今後もバルミューダテクノロジーズブランドでの製品作りを継続するという。

 「スマートフォン事業のスケール感が大きく、(独自性を出すためには想定以上の)大多額の資金が必要だった」と振り返った寺尾氏。よいチャレンジだったと後悔はしていないようだが、では次にどのような挑戦ができるのか。今後、テック製品ジャンルでの第二弾に挑戦するのであれば、バルミューダ製品の強みとは何かを、あらためて自問自答する必要があるだろう。

著者紹介:本田雅一

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ジャーナリスト、コラムニスト。

スマホ、PC、EVなどテック製品、情報セキュリテイと密接に絡む社会問題やネット社会のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジー、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析・執筆。

50歳にして体脂肪率40%オーバーから15%まで落としたまま維持を続ける健康ダイエット成功者でもある。ワタナベエンターテインメント所属。


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