しかし、これでは初代モデルの進化版でしかない。第一世代モデルにおいて、製品の企画・開発側と消費者の間にミスマッチがあったことが、互いに困惑している理由に他ならない。すなわち、第二世代モデルを作るためには、バルミューダが製品に込める思いと消費者が欲しいと思う要素、両者の情熱が重なる何かを求めての方向転換が必要なはずだった。
その何かを求めて開発が進められ、関連する人員の雇用も進めていたのだから、寺尾社長が第二世代モデルの開発に本気だったことは間違いないだろう。第一世代モデルはソフトバンクが最低の買い取り数をコミットすることでバルミューダを支援していたはずだが、その失敗の大きさから第二世代モデルで同様の取引が可能だったとは想像しにくい。言い換えればバルミューダ自身で、第二世代モデルの開発リスクを背負う覚悟だったのだと思う。
最終的に23年1〜3月期に5億3600万円の特別損失を計上することで事業を清算することを選択したが、同社のダメージはこの数字以上に大きい。決して先進的な技術を強みとしていたわけではないが、鳴物入りで投入した製品ジャンルで発売から2年を経過せずに撤退。サポートも2年間で終了するという事実はブランドを毀損(きそん)しかねない。
あらためて確認するまでもないが、販売時に機能や価値が固定されており、購入後はハードウェアとしての製品寿命を迎えるまで、初期の機能を提供し続けてくれる家電製品と、スマートフォンのようなテック製品は“価値の生み出し方”が異なる。だからこそ、バルミューダ製品はネットサービスやアプリに依存するIoT製品を作ってこなかったのではないか。
そうした意味で、寺尾社長はバルミューダ製品、ブランドの持つ価値や位置付けを正しく認識し、その領域から踏み出さないという賢い選択をしてきた。ちょうど同じ時期にソニー系子会社のQLIOがスマートロックの第一世代モデルをサポートから外すことを発表していたが、寺尾社長は同様の事態を避けるための選択をしてきたともいえる。
それだけに、第一世代モデルの評価が確定した後にも「独自アプリなどで差別化を」と話していたこととの矛盾が気になるが、同社は今後もバルミューダテクノロジーズブランドでの製品作りを継続するという。
「スマートフォン事業のスケール感が大きく、(独自性を出すためには想定以上の)大多額の資金が必要だった」と振り返った寺尾氏。よいチャレンジだったと後悔はしていないようだが、では次にどのような挑戦ができるのか。今後、テック製品ジャンルでの第二弾に挑戦するのであれば、バルミューダ製品の強みとは何かを、あらためて自問自答する必要があるだろう。
年間売上1億、ギョーザで起死回生の東スポ 次に狙う“鉱脈”とは?
ドコモ「保険証での本人確認廃止」をどう捉える? 嫌われ者マイナカードの意義
ChatGPTってビジネスで使えるの? 訝しむ人が知らない「使いこなし方」
「iPhone 14が売れていない」とささやかれる本当の理由
DAZN、価格爆上げの衝撃──ライブスポーツ独占チャンネルがもたらす光と影Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング