「東京ミッドタウン八重洲」から変わる東京駅前 “開かれた”施設が街に何をもたらすかオフィスは満床(3/5 ページ)

» 2023年05月24日 08時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

日本ブランドの発信と、新しい“公共スペース”

 「さまざまな人や物が集まる、開かれた街」という方向性を店づくりで体現しているのが、地上3階から地下1階の商業ゾーンだ。22年9月に先行オープンした地下1階の店舗を含め、全57店舗がそろう。

 三井不動産 アーバン事業部 事業推進グループの田中彩華氏は、商業ゾーンについて「日本中、世界中から人が集まるエリア特性を生かして、“日本の良さ”を発信したいと考えました。そのため、ジャパンブランドのお店にたくさん入ってもらっています」と説明する。

1階フロア。日本ブランドの店舗が並ぶ(筆者撮影)

 特に、“顔”となる1階には、西陣織の技術を生かしたテキスタイルを発信する「HOSOO」(細尾)、日本のデザイナーが立ち上げた人気アパレルブランド「CFCL」、吉田カバンのオリジナルブランド「PORTER」など、国内企業の店舗が並ぶ。

 そんな商業ゾーンの中でも、新たな機能を担うスペースとして設置したのが、2階の「ヤエスパブリック」だ。約820平方メートルの空間に、飲食9店舗と物販2店舗の小規模店を配置。自由に利用できるテーブルやいす、ベンチなどを豊富に設置している。三井不動産はこの場所を「新しい公共スペース」として作り込み、単なる飲食スペースではなく、さまざまな過ごし方ができるようにしている。

2階に設置した「ヤエスパブリック」(筆者撮影、一部加工)

 田中氏は「八重洲にはオープンな休憩スペースが少なく、六本木(東京ミッドタウン)などと違って屋外に作ることも難しかったので、施設内に設けることにしました。ふらっと立ち寄って休憩してもらえるように、さまざまな種類の座席を用意しています」と説明する。

 実際にヤエスパブリック内を歩いてみると、飲食しやすいテーブル席のほか、テラス席や小上がり席、立ち飲み席、階段状の休憩スペースなどがあり、次々と景色が変わる。地下のバスターミナルの利用者など、待ち時間で立ち寄る人も多く、平日の昼過ぎでもかなりにぎわっていた。

物販のポップアップ店舗やテーブル席、テラス席、小上がり席などがある(筆者撮影、一部加工)
奥まった場所には、立ち飲みができる店も(筆者撮影、一部加工)

 かき氷やラーメン、物販の店舗はポップアップ形式で、さまざまな店舗が入れ替わりで出店するため、来るたびに新しい発見がある。店舗にとっても、コストをかけずに気軽に出店しやすい環境を整えた。

 「今は、想定以上にたくさんの方に来ていただいており、絶えずお客さまがいる空間になっています。バスターミナル利用者やオフィスワーカーはもちろん、さまざまな目的で利用してもらえているようです」(田中氏)。開かれた街を象徴するスポットとなっているようだ。

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