“期待外れ?”の京阪電鉄中之島線はこのままなのか 再生のカギは2つ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2023年07月18日 10時10分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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中之島線九条延伸は「夢洲」のアクセス向上、阪神方面直通も考慮

 産経新聞の報道によると、京阪電鉄の持株会社・京阪ホールディングスは、7月1日付けで「中之島線延伸検討委員会」を設置した。委員長には京阪HD会長の加藤好文氏が就いた。最初の延伸目標は大阪メトロ中央線の九条駅だ。

中之島線延伸構想(地理院地図を筆者が加工)

 大阪メトロ中央線は大阪万博輸送を担うため、夢洲へ向けて延伸工事を進めている。中之島延伸は時間がかかるため大阪万博には間に合わない。しかし、夢洲には万博終了後にカジノを含む統合型リゾートが建設予定だ。統合型リゾートが開業すれば、毎日が万博輸送……とはいわないまでも、大きな交通需要が生まれる。

 京阪電鉄から乗り換え1回で夢洲に行ける。これは京阪電鉄沿線の人々にとって大きな魅力になる。中之島の開発進ちょくを待たずとも、中之島線に乗客が流れていく。京阪電鉄にとって魅力的なプロジェクトだ。「中之島線延伸検討委員会」は運輸、不動産、流通、レジャー部門の責任者が参加する。つまり、京阪電鉄だけの取り組みではなく、京阪グループ全体の利点を見越して、京阪グループとしての費用対効果(B/C)を算出するつもりだろう。

 中之島線の延伸については、04年の近畿地方交通審議会答申第8号で、JR西九条駅を経由して新桜島および夢洲へ延伸する提案があった。京阪電鉄としては、ひとまず西九条まで延伸すれば、建設のメドが立たない「なにわ筋線」の代わりにJR線と連絡でき、阪神電鉄方面からの集客も期待できた。その一方で、新桜島のユニバーサルシティにグループ会社のホテルを建設している。独自路線で新桜島、夢洲へ延伸する構想も捨ててはいない。

 しかしあえて西九条ではなく、当初の構想からそれた九条を選んだ。当初はユニバーサル・スタジオ・ジャパン、ユニバーサルシティが魅力的だったけれども、現在は夢洲という新天地の存在も大きくなった、中之島線をテコ入れするために、最も実現性の高い九条延伸を選んだともいえそうだ。

 「中之島線延伸検討委員会」は今年度中に延伸の可否について結論を出すという。鉄道の新路線は、環境影響評価も含めて、建設決定から開業まで最低10年はかかるといわれている。23年度中に延伸を決定した場合、開業は早くて34年ごろだ。なにわ筋線は31年春の開業予定だ。

 あと10数年。京阪中之島線がドル箱路線になり、中之島が再び天下の台所の中心になる日が来るかもしれない。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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