G-SHOCKの初代モデルは、なぜ40歳で“形状”を認められたのか経済の「雑学」(2/3 ページ)

» 2023年07月21日 10時30分 公開
[土肥義則ITmedia]

証拠を集める作業

 G-SHOCKの売り上げを見ると、現在は世界140カ国以上で発売していて、累計出荷数は1億4000万個を超えています。22歳だった05年と21年の数字を比べると、3倍以上も増えているので、認知度の広がりがうかがえます。ちなみに、これまでの出荷数の推移を見ると、いい感じに伸びているので、登録にあたって大きな障壁にはならなかったはず(たぶん)。

「G-SHOCK」累計出荷個数/年間出荷個数の推移

 では、認知度はどうでしょうか。メーカー名やロゴなしの画像を複数見せて、その中から「G-SHOCKの初代モデル」を当ててもらいました。結果、正解したのは6割ほど(※)。この数字が高いのか低いのか。専門家でない筆者は判断できませんが、考えてみるとコーラやしょう油などと違って、時計は頻繁に買うモノではありません。そうした商品の特性を考えれば、6割という数字は高いのかもしれません。

(※)インターネットを使った調査で、16歳以上の男女1100人が回答した。調査期間は2021年6月。

 最後は、メディアの露出について。この話をすると「メディアで取り上げられるかどうかなんて、関係ないのでは?」と思われたかもしれません。繰り返しになりますが、立体商標として登録されるには、多くの人が知っていることを証明しなければいけません。「これはG-SHOCKの初代モデルだ」と。

 「多くのメディアで取り上げられてきた=多くの人が知ることになる」といった証明になるので、カシオの担当者は、G-SHOCKの初代モデルが掲載されている新聞、雑誌、書籍、CMなどを集めていきました。直近のモノについてはデータが残っているので、それほど難しくはありませんが、問題は昔のもの。

DW-5000Cをベースにした「DW-5040RX」

 40年ほど前の新聞、雑誌、書籍といえば、すべて紙。データとして残っていないので、現物を集めなければいけません。担当者は社内で持っていそうな人に声をかけて回りました。「30〜40年前に掲載された記事、持っていませんか?」と。1人だけではなく、2人、3人……とたくさんの人に声をかけて回って、段ボール3箱分の証拠を集めたそうです。

 G-SHOCKの出荷数を見ると、最初のピークを迎えたのは1997年でした。それ以前の出荷数は少なかったので、メディアもそれほど取り上げてくれません。「古い」+「貴重」という条件が重なって、当時の記事を集めるのは困難を極めたそうです。

 というわけで、少しずつ少しずつ証拠を積み上げていって、誕生40周年という区切りのよい年に登録が決まったわけです。

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