「ビッグモーター」不正 CM起用の俳優は「好感度ダウン」で損害賠償請求できる?経済の「雑学」(2/3 ページ)

» 2023年07月22日 07時15分 公開
[樋口隆充ITmedia]

違約金、契約金の2〜5倍が相場

──不倫などのスキャンダルで、芸能人やその所属事務所が企業側に違約金を支払うという報道が多い。一般論として、これはどのような契約内容・仕組みになっているのか。

牧野氏: 「違約金」とは、契約違反があった場合に企業やタレントが相手に支払う「損害賠償金の予定額」を指すが、タレントに支払われる契約金の2〜5倍に規定されることが多いとされている。

photo 芸能人がスキャンダルを起こした場合は多額の違約金が発生するとされる(提供:ゲッティイメージズ)

 契約違反があった場合に、被った損害の証明が非常に難しいため、あらかじめ相手に支払う「損害賠償金の予定額」を合意しておき、相手方に契約違反があった場合に支払義務を負う損害金を「違約金」と呼んでいる。

 通常は、タレント側が企業側へ支払うべき「違約金」は規定されているが、今回のように企業側がタレント側へ支払うべき「違約金」が規定されることもある。

芸能人が企業に賠償請求「可能」 損害証明が困難

──芸能人は好感度が仕事に直結する職種だ。今回のように、企業側が不正を行い、起用された芸能人側が被害を受けた場合、一般論として、芸能人側が企業に損害賠償請求をすることは可能か。

牧野氏: 俳優側からビッグモーターに、タレントとしてのイメージダウン(契約違反や不法行為)を理由に、損害賠償を請求することは法的には可能。ただしイメージダウンによって、タレントが被った損害の証明が非常に難しいのが実情だ。

──これまで芸能人・タレントなどが企業を訴えたケースはあるのか。

牧野氏: 詐欺的商法を行った企業の広告に出演したタレントが、その被害者から損害賠償請求された事例が見られる。代表的事例が「円天」事件だ。疑似通貨「円天」を使った健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」(L&G)による巨額詐欺事件だが、多くの芸能人が広告塔になっていた。首謀者は実刑判決を受け、L&Gも破産したものの、その後、被害者が芸能人に対して訴訟を起こした。

photo 過去には芸能人が広告塔にされた巨額詐欺事件も(提供:ゲッティイメージズ)

 このとき報道はされてはいないが、被害者から訴えられて損害賠償責任が認定されたタレントは、責任を負うべき企業に対して損害賠償請求を行っている(場合により民事訴訟を提起している)と推測される。

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