昭和の時代は、会社が決めた枠組みの中で、最高の結果を出す人が評価されていたのに。50歳になったとたん「あんたそれじゃダメよ」といわんばかりに、突き放すのもいささか勝手すぎます。
そもそも大人(20歳以上)の「10人に8人」が40代以上、50代以上に絞っても「10人に6人」時代に突入した超高齢社会日本にとって、50代以上のシニア社員は切り札のはずなのに、企業は切ることばかりを考えている。
少子高齢化は今後さらに急速に進行し、女性の働き手も外国人の働き手も頭打ちになっているのに、シニア社員を切って、その先に何があるというのでしょうか。
厚労省の集計結果を見れば、その選択には相当な無理があること分かるはずです。
なんとこの12年間で60歳以上の従業員は2倍に増え、65歳以上は3.2倍と爆増。年齢全体では1.2倍なのに、65歳以上は320%も増えています。「切っても切っても雨後のたけのこ」のように増え続けるのがシニア社員であり、この現実に危機感を持たずに、50歳を、いや45歳以上の社員に肩たたきをしたり、閑職へ追いやったりする企業に未来はありません。
世界中の企業が「リスキリング」に注目するのも、高齢化が進む先進国では労働人口が減少する傾向にあるので「今ある人材をなんとか使わなきゃ!」という危機感と、社外から採用するコストより「わが社の社員」に投資した方がコスパがいいからに他なりません。
世界経済フォーラムとボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によれば、米国におけるリスキリングのコストは1人当たり約2万4800ドルで、社外から採用するよりコストを6分の1程度に抑えられるとしました。
この試算にはさまざまな意見もありますが、リスキリングで社内投資した方が、社外から採用するより圧倒的に安いという点では一致しています。
……それなのに、日本では「リスキリング」を雇用流動化させるための手段と勘違いし、派遣会社やらキャリアコンサルタントやらを通じて転職紹介する枠組みを、国が作ったりしているのですからまったくもってわけが分かりません。
と、あれこれ書きましたが、何を言っても馬の耳に念仏。トップの本音は、賃金が若手より高いシニア社員にこれ以上関わりたくないのであり、この大きな流れが変わることはないでしょう。どんなに超高齢社会になろうとも、ビジネスの世界では年寄りは嫌われるという、残念なリアルが存在するのです。
となれば、働く人たちが変わるしかない。
会社にどんな理不尽な扱いを受けようとも、自分を進化させる働き方にシフトするしかありません。
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