そこで求められるのが「人格的成長(Personal growth)」です。
人格的成長とは、「成長し続けている感覚がある」状態のことで、そのエンジンになるのが「自分の可能性にかけてみたい」と思えるかどうかです。
国内外で実施された調査で「人格的成長の度合いは年齢とともに低下しやすい」という一貫した結果が得られています。一方で、私がこれまでインタビューした人の中で、いくつになっても人格的成長を維持していた人たちには、例外なく「自分への怒り」がありました。
特に、役職定年など外的な要因で側道に追いやられたり、会社から肩たたきされて会社を出たりした人たちほど、それが顕著でした。自分の立場に戸惑い、投げやりになったり、息を潜めそうになったりしながらも「このままじゃつまらない」とあらがい、自ら主体的に動いていました。
ある人は転職先で「新人の時を思い出して、朝早く行って掃除をして、みんなの名前をまずは覚えよう」とまわりの社員に自分を知ってもらうことを徹底し、ある人は閑職に追いやられ「自分の技術を若い人たちに移転しよう」と自分から後輩たちに語りかけ、ある人はやっと決まった転職先で「とにかく学ぼう!」と雑用から覚えていきました。
「ここで腐ってたまるか」という自分への怒りこそ、人格的成長の導火線です。
彼らは目の前の仕事を「少しでもいい仕事にしてやる!」と意地を見せることで、怒りを前に進むエネルギーに転換していました。その結果、人格的成長が強化されていったのです。
人格的成長のスイッチは「アナタ」にしか押すことはできません。すべての人間に人格的成長の機能が常備されていますが、これだけはアナタ次第です。
そこで大切にしてほしいのが「具体的に動く」こと。
こういった気持ちになったら、動く。とにかく動く。アレコレ考えずにとにかく動く。動きさえすればスイッチは完全にオンされ、生きるエナジーがドンドンと充電されます。
自分の可能性を信じ「学びたい」という真摯な気持ちさえあれば、進化できます。
自分で限界さえ設けなければ、可能性はどんどんと広がります。それは周りから求められ続けることでもある。とにもかくにも「動け!」です。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。
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