「スーパーマリオ」の国内出荷数 「あつ森」以外にも3つのソフトが「しれっ」と抜いている件について(2/2 ページ)

» 2023年08月29日 06時30分 公開
[河村鳴紘ITmedia]
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 ともあれ、多くの人気ゲームが、長年にわたって抜けなかった「スーパーマリオブラザーズ」の記録が、次々と抜かれてしまうのは、なかなかの驚きです。ゲーム機の国内出荷数ですが、ニンテンドースイッチ本体の3000万台突破は時間の問題で、巨大な“受け皿”があることが大きいでしょう。

photo ニンテンドースイッチ本体(出典:任天堂公式Webサイト)

 そう言えば「ポケットモンスター 赤・緑・青・ピカチュウ」と「ポケットモンスター ・金・銀・クリスタル」もゲームボーイ向けソフトで、ゲームボーイの国内出荷台数は現時点のスイッチを上回る3247万台。驚異的なソフトの出荷記録には、当然ながら驚異的なゲーム機の普及があるわけです。

 同時に、スマートフォンで無料のゲームが遊べるにもかかわらず、有料(それも数千円もする)のゲームソフトが、かつてよりも売れたということ。もちろん新型コロナウイルスによる「巣ごもり」の影響もあるのでしょうが、そのままゲームを遊ぶ習慣が定着していると考えても良いのではないでしょうか。

 ランキングで5位になった「スーパーマリオブラザーズ」ですが、ゲーム機(ファミコン)を所有する3人のうち1人が持つまでになった快挙が色あせるわけでもありません。さらに同作は、現在のサービスでも遊べてしまいます。そして「マリオカート8」も「スマブラ」もマリオが登場しますから、むしろ「マリオは強い!」と言えなくもありません。

 何より、記録はいつかは塗り替えられるもの……という考えもあります。

 研究者としてではなく、開発者としての立場で言えば、「過去に作ったものを振り返ってアーカイブする」という発想はないんです(笑)。

 ユーザーが、たとえば「30年前にこんなのがあったねえ」と懐かしんでくれるのは嬉しく思いますし、メモリアルとして祝ってくれるのはとてもありがたいことです。しかし、作る側としては、「自分で作ったモノはその瞬間から全部ライバルになっていく」のです。

 30年前のモノなんて「超えていくのが当たり前」であって、超えられなかったら恥以外の何者でもない。過去を超えていかないと、ユーザーは絶対メモリアルにしてくれません。だから開発者にとっては、「記念などというものは存在しない」のです。

ゲーム産業の系譜 ファミコンの開発者が語る日本の家庭用ゲーム産業の幕開け

 ファミコンの「生みの親」である上村さんの、開発者の気概を感じる話ですね。確かにアーカイブになるのは、ゲーム産業が拡大し、それを振り返る意味があるからこそです。

 ともあれ、今後も次々と売れるソフトが出て、記録を書き換えていく……というのが理想なのかもしれませんね。


 「CESAゲーム白書」は、ゲーム業界団体「コンピュータエンターテインメント協会(CESA)」が1996年から発行している書籍です。31日に発売された「2023 CESAゲーム白書」(A4判、233ページ、7700円)は、ゲームについての市場規模や産業構造の解説、各種データを掲載しています。

書き手:河村 鳴紘(かわむら・めいこう)

ゲーム、アニメ、マンガなどを主戦場にするフリーランスのサブカルライター。ヤフーオーサー、マンガ大賞選考員。メディア所属時には、決算会見や各発表会に参加し、独自記事なども執筆。20年以上ゲーム業界を中心に取材している。2020年5月、「『ドラゴンクエスト』大ヒット連発なぜ? 30年前の伝説の熱狂」でヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞した。「文春オンライン」や「Number Web」(ともに文藝春秋社)などでも記事を執筆。静岡放送などでラジオに出演することも。

ヤフーニュース個人:「河村鳴紘のエンタメ考察記

Twitter:@kawamurameikou

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