これからは「人事計画」ではなく「リソース計画」が重要なワケ人的資本経営とCHROの役割(3)

» 2023年09月07日 07時00分 公開

 人的資本経営の必要性が増す中、CHRO(最高人事責任者)のポジションを設置する企業が増えています。本連載では、どのようにして人的資本経営を実現していくのか、そしてその中におけるCHROの役割について解説します。

 採用やタレントマネジメントの実践、異動配置など、人的資本経営を実現するためにとれる施策は多数ありますが、これからの時代に欠かせないのがDXを中心としたテクノロジーとの共生です。

 なぜ、テクノロジーとの共生が必要なのか。その理由やテクノロジーで変わる人事の業務とCHROの役割について解説します。

深刻な労働力不足、求められるテクノロジー活用

 第1回の記事でもお伝えした通り、今後ますます加速するのが労働力不足です。労働人口の減少が深刻化し「頑張って人を採用する」というレベルでは難しい時代になってくるでしょう。

採用難により、テクノロジー活用は不可欠に (画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 人が確保できない穴を、例えば社内の異動配置で埋めようとしても、ジョブ型で採用した人材を異動させてしまっては辞めてしまう可能性もあります。 人を採用できない、異動配置もうまくいかないといった状況では、社員一人当たりの負担が増加し、疲弊してしまいかねません。これではとても人的資本経営を実現できているとは言えないでしょう。

 そのような状況を打破していくにはテクノロジーを導入し、人でなくてもできる仕事を自動化・効率化させていくことが不可欠です。

「人事計画」ではなく「リソース計画」が重要なワケ

 ロボットやAIなどといったテクノロジーを活用し、DXを進めていくことで、人はより本質的な業務に集中できます。 人的資本を最大化させていくためにも、DXの推進は非常に重要な施策といえるでしょう。

 すでにそうした技術を導入してDXを推進している企業も多くあります。

 以前、私が人事部長をしていたデジタル企業では、5〜6年前から試験的にロボットを導入していました。部署によっては15〜20%がもはや人ではなくロボットが配置されていたのです。

 テクノロジーは当時よりさらに進歩し、ChatGPTなどの生成AIのように実用的なものも増えてきました。これからの時代のマネジメントには、人ではないリソースを含めた「リソース計画」の立案と実行が求められます。

 その際に重要なのがどこに人を配置し、どこにロボットやAIを配置するのかといったアロケーションです。

 従来、人でないとできないと考えられていた業務もテクノロジーの進化によって可能になっているケースも増えています。人事やマネジメントは常に最新の状況をふまえたアロケーションが求められるのです。

 ChatGPTも、人間側が何度か問いかけたり指示を出したりすることで回答の精度が高まります。まだロボットやAIを使う人のスキルやリテラシーが求められることも多いため、テクノロジーを活用できる人も含めて配置を考える必要があるでしょう。

 全てをロボットやAIが代替することはできませんが、効率化できる業務は増加します。労働力不足が加速する現状を踏まえると、人ではないリソースの活用が重要なのです。

テクノロジーで変わる人事の業務とCHROの役割

 ロボットやAIを含めたリソース計画やテクノロジーを活用した仕組みを作っていくとなると、人事だけで決められることではなく経営マターになります。

 どれだけテクノロジーに投資をするのかということも含め、CHROは最適な配分を考えて経営陣と協議していく必要があります。

 また、ロボットやAIが当たり前のように配置されるようになれば、人事の仕事ももはや人だけに留まらなくなってきます。人の育成やマネジメントも今までとは全然違う考え方で行うことが必要です。

 非常に難易度が高くなりますが、未知の領域に挑戦できるチャンスとも言えます。これからの時代、CHROはその先頭に立ち、人だけではないテクノロジーの活用も含めた人事戦略の立案と実行が求められるでしょう。

著者紹介:佐藤邦彦(Thinkings 執行役員CHRO)

1999年、東京理科大学理工学部卒業。同年、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)入社。業務改善・IT導入支援などのコンサルティングに従事した後、2003年にアイ・エム・ジェイに転職し事業会社人事としてのキャリアをスタート。7年半の在籍中に採用、育成、制度運用、組織開発、労務などを幅広く担当し、後半はチームマネジメントを経験。11年にIMAGICAグループに移りグループ人事を担当。以降、14年よりライフネット生命にて人事総務部長、17年より電通デジタルにて人事部長を歴任。20年4月よりリクルートワークス研究所に参画し、22年8月まで『Works』編集長を務める。22年10月より現職。

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