おまけにわが国のトップときたら「2030年代半ばまでに最低賃金の全国加重平均を1500円まで引き上げる」などと悠長なことをいい、経団連のトップは「そんなにむちゃな話ではないと思う。そうなるように経済環境を持っていかなきゃいけない」と、これまたまるで他人事なのに、日本の働く人たちは「NO」を突きつけようともしません。
そもそも1999年のILO(国際労働機関)総会で「ディーセント・ワーク」という概念が提示されて以降、世界では「Decent Work for All=すべての人にディーセント・ワークを」を合言葉に、働く人たちの尊厳の向上を目指し具体的な活動が進められてきました。
ディーセント・ワークとは「権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事」を意味します。その仕事とは「労働基準および働く上での権利」「雇用」「社会的保護」「社会対話」の4つの柱で成立します。
ILOは、社会対話を「政府、使用者、労働者の代表が、経済・社会政策に関わる共通の関心事項に関して行うあらゆる種類の交渉、 協議、あるいは単なる情報交換」と定義しています。社会対話を可能にする条件は以下の通りです。
こうした社会対話の形態の1つが「春闘」のような労使の二者構成であり、ストライキは「団体交渉の基本的な権利」です。
ところが、日本では経営の司令塔である経団連が、その社会的対話を「いらない」と。2020年の経営労働政策特別委員会報告に「業界横並びの集団的な賃金交渉は、実態に合わなくなっている」と明記し、世界のルールを無視してるのでは? とツッコミをいれたくなる勝手な言動を続けているのです。
本来、経団連の使命は「企業と企業を支える個人や地域の活力を引き出し、日本経済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与すること」です。ならば、組合のあり方そのものも変えなくてはならないはずなのに、「若い人が組合に入りたがらない」「非正規雇用は社員じゃない」などとのたまっている。このままでいいわけがない。
今回の大手百貨店のストライキをきっかけに、働く人たちが声をあげるのが当たり前の世の中にならないと、日本の生産性の向上など不可能です。
繰り返しますが、「社会対話」は自由、平等、保障、人間の尊厳といった条件の下で、男女を問わずすべての人々がディーセント・ワークを得る機会を促進するというILO(国際労働機関)の目的達成においてカギとなる役割を果たしています。
メディアは、イメージ作りが得意技。ストをする人=おかしな人、ストライキ=迷惑な行為、という奇妙なイメージを変えることくらいやってほしい、と個人的には思うのですが。そこに期待するのは検討違いなのでしょうか。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。
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