そごう・西武“最終手段”ストライキ発動 要因は“物言わぬ”セブン61年ぶり

» 2023年08月30日 14時08分 公開
[ITmedia]

 そごう・西武の労働組合は8月31日、西武池袋本店でストライキを予定している。大手百貨店でのストライキは、1962年5月に当時の阪神百貨店で実施された以来、61年ぶりだ。なぜ、ストライキという“最終手段”に発展したのか。事の発端は2022年11月、親会社のセブン&アイ・ホールディングスが、そごう・西武を米投資ファンドに売却すると発表したことだ。小売・流通アナリストは「売却後の雇用について明言されず、ここまでもつれた」と指摘する。

seibu 西武池袋(提供:ゲッティイメージズ)
seibu セブン&アイHDが、そごう・西武を米投資ファンドに売却すると発表(公式Webサイトより引用)

 売却先の投資ファンドは、そごう・西武が持つ池袋、渋谷、千葉の不動産を、提携先であるヨドバシカメラに売却する計画だという。「例えば三越伊勢丹に売却するのであれば、労働組合側も意見しないでしょう。ですが、ヨドバシに売却するとなると話は変わってきます」(小売・流通アナリストの中井彰人氏)

 ヨドバシに売却された場合、百貨店としての売場は大幅に縮小、さらには切り売りされて消滅する可能性もある。そうなれば、そごう・西武の従業員の雇用に大きな影響が出ることは避けられない。

seibu ヨドバシカメラに売却されれば雇用への影響は避けられない(提供:ゲッティイメージズ)

 しかしセブン&アイHDは、今後の雇用について説明を求める労働組合に対し、明言を避けている。「もちろん売却後のことを考えるのは買収側でセブンは口出しできません。ですが、それを盾にきちんと説明しなかった結果、ストライキという最終手段を取らざる得ない状況を作り出しました」(中井氏)

 中井氏は、今回のストライキにより、セブン&アイHDのイメージダウンは避けられないと指摘する。「依然として厳しい状況が続く百貨店業界においては、渋谷の東急百貨店東横店の閉店や、新宿の小田急百貨店の減床がありました。ですがこの時には今回のような事態は起きていません。きちんと今後の雇用について、経営側と従業員側で話がついているのです」(中井氏)。しかし今回の場合は、小売りの最大手であるセブン&アイHDが、グループの社員の今後について放り出したも同然だ。中井氏は今後、訴訟の可能性もあると指摘する。

seibu 東急百貨店東横店(公式Webサイトより引用)
seibu 新宿 小田急百貨店(公式Twitterより引用)

 消費者への影響はどうか。今回のストライキの対象となるのは、そごう・西武が直接雇用している従業員のみ。取引先からテナントに派遣されている従業員は対象外だ。直営の売り場のみが閉鎖となり、影響は限定的である可能性が高い。

 今回のストライキについて、中井氏は「労働者の権利を守るためであり、きちんと戦うべきだ」と捉えており、消費者も応援する目を待つことが必要だとしている。ストライキの決行が明日に迫る中、どのように決着するのか注目だ。

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