渋谷・新宿・池袋で起きる異変──なぜ「電鉄系百貨店」だけが消えるのか?小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)

» 2023年02月28日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 2023年1月31日、東急百貨店本店が閉店した。跡地にはホテル、商業施設、賃貸マンションなどが入る36階建ての高層複合ビルが再開発される予定だが、そこに、百貨店は入らないようだ。

 再開発が進む東急渋谷駅では、これに先立って東急百貨店東横店が閉店しており、残る百貨店は西武渋谷だけになった。ただ、ここも、そごう・西武の経営権がファンドに移る関係で、そのパートナーであるヨドバシカメラの出店候補地となっていることが報道されている。となれば、渋谷から百貨店は近いうちに消える、ということになる。

1月31日、東急百貨店本店が閉店した(東急百貨店Webサイトより)

渋谷・新宿・池袋から消えゆく百貨店

 巨大駅ターミナルから百貨店が消えていくというのは、渋谷に限った話ではない。新宿でも再開発の関係で小田急百貨店が大幅に減床して営業継続中だが、その存在感はなくなった。京王百貨店についても再開発計画があり、開発完了後は百貨店として継続する可能性は薄いと噂されている。

 話題の西武池袋については、確定までには紆余曲折があるようだが、そごう・西武を譲り受けるファンドのパートナー、ヨドバシカメラが出店する意向を明らかにしており、百貨店としての存続とはならないだろう。同じく池袋の西口には東武百貨店があるが、ここも周辺地と一体での大規模再開発が計画されており、百貨店としての存続の可能性はほぼなさそうだ。

 こうしてみると、日本の百貨店の2類型といわれる呉服系百貨店、電鉄系百貨店のうち、電鉄系の主要店舗が首都圏からなくなることになりそうだ。世界有数の鉄道網である首都圏鉄道ターミナルの人流を背景に大きな存在感を持っていた電鉄系百貨店がなぜ今消えようとしているのか、少し昔を振り返りながら考えてみたい。

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