このような状況にもかかわらず、三位一体改革のリスキリング支援策は補助金の増額など表層的な政策が多い。具体的な政策は、三位一体改革の指針によると以下の通りである。
ITやデジタル分野の教育重視が目立つが、これらは民間教育会社や大学・大学院などの課程でオンライン受講ないしは夜間、土・日に受講する講座も含まれる。仕事とプライベートの合間の時間を割いて自発的に受講しようとする人がどれだけ増えるかが問題だ。
仮に受講しても、資格や学位取得まで継続できるかも課題となる。前述したように企業が設けているe-ラーニングの受講者が少ないことを考えると、長時間労働の是正など企業の後押しが欠かせない。また、リスキリングに消極的な中高年世代が意欲を持って受講するかも疑問だ。
もう1つの課題である、会社が実施するリスキリング支援については、前述した日本企業の教育投資が少ないことを前提に、三位一体改革の指針では「諸外国の経験を見ると、人への投資を充実した企業においては、離職率の上昇は見られない。むしろ、自分を育てる機会を得られたとして、優秀な人材をひきつける結果となっている。このため、企業自身が個人へのリスキリング支援強化を図る必要があると肝に銘じなくてはならない」と強調している。
しかし、具体的な政策は小粒だ。給与所得控除によるリスキリング費用の控除のほか、休業中の「雇用調整助成金」について、休業の助成率を引き下げ、教育訓練を求めることを打ち出している。なお、雇用調整助成金の助成率引き下げについてはコロナ下における雇用の維持が当初の目的であり、労働移動を阻害するとの考えからだ。
この程度の施策では企業が積極的に社員のリスキリングを支援するとは思えない。このままでは絵に描いた餅に終わる可能性も高い。
次回はリスキリングと並んで転職を促進するというジョブ型賃金(職務給)の導入の政府の狙いについて検証したい。
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