わが国で急速に進行する少子高齢化によって、現在50歳程度までの現役世代は、公的年金が“払い損”となるケースも増える見通しとなっている。金融庁は2019年に金融審議会市場ワーキンググループにて「老後資金2000万円問題」を提起し、公的年金以外で2000万円を工面するために資産運用をはじめとした老後への備えの必要性を強調した。
しかし、およそ1年前に発足した岸田政権は、資産運用で得られた金融所得の課税強化を掲げた。課税強化をしつつも資産形成を促す上では、NISA制度の拡充やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった非課税口座の活用が必要となってくるが、最近では「退職所得控除の縮小」という税制の変更がiDeCoに対する実質的な増税となるのではないかと囁かれている。
18日に開催された政府の税制調査会の総会では「退職所得控除について勤続年数にかかわらず控除を一定にするべきだ」という趣旨の意見が出された。背景には、勤続年数が20年以上になると有利になる「退職一時金」の税制が人材の流動性を阻害しているという意見があるとされる。この意見が反映されれば、同じく退職所得控除を使って税金を抑えられるiDeCoの支払い税額が上がってしまうことから、実質的なiDeCoへの増税ではないかと物議を醸した。
一見関連性のない「退職所得控除の縮小」と「iDeCo」だが、どのようなロジックで”増税”となるのか、順に確認していこう。
iDeCoといえば「非課税」というイメージがあり、NISA口座と同じような制度であると思われる方も少なくはないだろう。しかし、iDeCoはNISAと異なり「完全非課税」ではない。具体的にいうと、iDeCoは「(1)掛金が所得控除の対象となり」「(2)運用益が全額非課税」となるが、「(3)受け取り時には税金がかかる」場合がある制度である。
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