品質へのこだわりも強く、ハンバーグは、工場で前日午後9時から明け方にかけて生産したものを提供しているようだ。提供までの時間が短いことで、冷凍せずに冷蔵で輸送できる。そのため、生産してから品質を落とさずに提供できるメリットがある。びっくりドンキーの客単価はランチ1100円、ディナー1250円とされるが、こうした施策が「値段の割に美味しい」という評価につながっていると考えられる。
料理単体だけでなく、メニュー構成の全体を見ても高評価の理由がうかがえる。あくまでメインはディッシュメニューだが「イカの箱舟」「薪窯マルゲリータ」など、サイドメニューも充実している。子ども向けのディッシュやカレー、デザートも豊富だ。
アルコールメニューも幅広く、自社生産のクラフトビールを提供している。同社では95年からビールの自社生産を手がけているという。時間帯別メニューも充実しており、モーニングではベーコン・ソーセージ・目玉焼き・トーストなどをワンプレートで提供するほか、ランチではみそ汁付きのディッシュも販売している。
以上のように、びっくりドンキーは大人から子ども、さらには飲酒ニーズやモーニング・ランチ時間向けのものまで、幅広い客層を狙えるメニュー構成となっているのだ。年齢・性別を問わず一定の評価を得ているのも、こうしたメニュー構成が好まれているからだろう。
一方で、種類が豊富だと利益を圧迫してしまいそうだが、メニュー構成はあくまでハンバーグが中心になっている。そのため、極端に非効率ということはなく、ある程度の効率化ができているようだ。料理の種類は多いもののジャンルは少なく、他のファミレスのように和食から洋食まで手広く提供しているわけではない。
同社における19年3月期から23年3月期までの全社売上高は次のように推移している。
20年度こそ落ち込んだものの、23年3月期には初めて400億円を突破し、過去最高を更新した。この間、店舗数が減少していないのも特筆すべきだろう。
コロナ禍での落ち込みが少なく、すぐにV字回復を遂げたのは消費者から高い評価を得ていることが大きな理由といえる。ここまで解説した通り、びっくりドンキーの高評価は「(1)特徴的な店舗デザイン」「(2)ハンバーグの味と品質」「(3)幅広い層に好まれるメニュー構成」の3点に起因すると考えられる。
店舗の雰囲気と料理の両方を楽しめるファミレスは、なかなか稀有な存在だ。あくまでハンバーグに特化しているため、サイゼリヤやガストのような1000店規模にまで広がるのは難しいと思われるが、びっくりドンキーは今後も多くの人に愛されるファミレスとして確固たる地位を維持し続けるだろう。
山口伸
化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_
びっくりドンキー、「990円」朝食の反響は? ホテルのようなメニューを開発した背景
290円ラーメンに250円定食 びっくりドンキー、幸楽苑、なか卯で進む「朝食革命」の正体Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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