「管理職になりたくない」 優秀な社員が昇進を拒むワケ(2/2 ページ)

» 2023年09月25日 07時28分 公開
[木村政美ITmedia]
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不公平感を生まないために企業ができること

 前項ではビジネスパーソンが管理職昇進を拒否する要因を取り上げましたが、その中でも次の2つの事項が大きなネックになっています。

(1)役職にふさわしい業務内容、権限を与えていない

(2)役職に相当する処遇を与えていない


 昇進を拒否されないようにするには、この2つについて会社の現状を把握し、改善に取り組むことになります。

 (1)については、例えば管理職に一般社員がするべき雑務を任せる(働き方改革のため一般社員の残業を抑制し、その影響で管理職にしわ寄せがくることがある)ケースがあります。他にも、せっかく管理職になっても、社長や上級管理職に権限が集中しているため、部署内の業務遂行方法などの権限がほとんどないといったケースがあります。

 その場合、管理職に魅力を感じられずやる気をなくしてしまいます。役職の職務と権限内容を明確にし、管理職本来の職務(組織を率い、部下の指導や管理を行う)と一定の権限を与えることで、仕事に対するモチベーションを上げ、キャリアアップにもつながりやすくなります。

 また、管理職者と代理役で業務を分担するなど、プライベートなどの諸事情があっても業務が遂行できるよう職場環境を整えることも大切です。

管理職 (ゲッティイメージズ)

 (2)については、年功序列で基本給を決定している場合、役職手当の額が低いと、役職の有無にかかわらず世代間の給与額の差異が少なくなります。また管理職に就き、残業代の支給がなくなることで、労働時間に対して時給換算した場合の賃金額が昇進前と比べて減少することもあります。

 業務量が増え責任が重くなっても、相応の処遇が提示できなければ、昇進を拒否されるケースは今後ますます増えるでしょう。会社の賃金体系を確認し、必要ならば賃金テーブルや役職手当を見直す必要があります。また、ジョブ型雇用制度の導入などを検討し、役職にふさわしい給与や処遇を与えることが重要です。

おわりに

 採用条件に「昇進あり」とする総合職採用のビジネスパーソンが辞令交付後も昇進を拒否した場合、就業規則の懲戒規定に明記があること、処分する事由が社会通念上妥当であることなどの条件に合致すれば、業務命令違反として懲戒処分をすることが可能です。しかし、懲戒処分にすることで仕事に対するモチベーションが低下したり、処分が下る前に転職されたりすることもあり、特に人材不足に悩む企業にとっては、そのような事態になることは避けたいところです。

 優秀な人材を管理職に据えて企業の中核を担ってもらうには、社員が管理職を拒否する要因を踏まえた上で、対策として企業がどのような取り組みをするべきなのかを検討し、実行することが肝要です。

木村政美

1963年生まれ。旅行会社、話し方セミナー運営会社、大手生命保険会社の営業職を経て2004年社会保険労務士・行政書士・FP事務所を開業。労務管理に関する企業相談、セミナー講師、執筆を多数行う。2011年より千葉産業保健総合支援センターメンタルヘルス対策促進員、2020年より厚生労働省働き方改革推進支援センター派遣専門家受嘱。

現代ビジネスダイヤモンド・オンラインオトナンサーなどで執筆中。


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