さらに、今後注目されるのは、こうしたスポンサー企業の「ジャニーズ離れ」がメディアに波及するかどうかという点です。
特にテレビ番組では、ジャニーズ事務所の所属タレントを起用することこそが、視聴率をあげ、スポンサーを呼び込むことにつながっていたため、多くのテレビ番組にジャニーズ事務所の所属タレントが出演。
それがまたタレントのファンを増やし、スポンサーにとっての魅力を増やすというポジティブサイクルがまわっていました。
しかし、もしスポンサー企業が、当面ジャニーズ所属タレントの出演番組に広告出稿すること自体を避けるようになると、このサイクルが逆回転することになりかねません。
前述の櫻井翔さんのラグビー日本代表アンバサダー起用が、フランス大手紙「ル・モンド」に批判されたように、ジャニーズ所属タレントの番組へのスポンサーをメディアや消費者に批判されるような事態になれば、当然スポンサー企業にとっても大きなリスクになりえるわけです。
また、並行して注目されるのが、今回ジャニー喜多川氏の性加害問題において、問題の一つとして明確に「メディアの沈黙」や「忖度」を指摘されているメディアの対応です。
ジャニーズ事務所の記者会見でも、テレビ番組においてジャニーズ事務所以外の男性グループやジャニーズ事務所を退所したメンバーを出演させないという「忖度」があったのではないかという指摘がされ、東山社長が今後そうした「忖度」をやめるのは当然という趣旨の回答をする流れがありました。
この質問をした松谷さんが、TBSの番組で「次はメディアのターン」と発言されていたように、当然メディアは今後ジャニーズ事務所への「忖度」を脱却できているかという視聴者の厳しい目線にさらされることになります。
(参考記事:ジャニーズ事務所の最大の共犯者・テレビ局は、自己検証を避けてはならない)
ジャニーズ事務所の会見の後、テレビ局各局は声明を発表。NHKは「事務所の姿勢などを考慮して出演者の起用を検討」と慎重な姿勢を見せたものの、民放キー局は基本的に「これまで通り」というスタンスの声明を出しました。
(参考記事:ジャニーズ所属タレントの番組出演、民放キー局「これまで通り」 NHK「事務所の姿勢など考慮」)
これに対しては、さまざまな有識者や視聴者からも批判の声があがっており、フランス・ジャポン・エコー編集長のレジス・アルノー氏は「開いた口が塞がらない」として、日本の大手テレビ局は「最低でも第三者委員会を立ち上げ」て自らの忖度の検証をするべきだと問題提起をされています。
(参考記事:海外記者がジャニーズ会見に見た日本の「大問題」)
こうした批判に見られるように、今後テレビ局各局は番組作りの際に、ジャニーズ所属タレントを起用するたびに、番組が「忖度」しているように視聴者に見えていないか、を気にすることになります。
現在出演しているタレントがいきなり降板するような展開にはならなくても、ジャニーズ事務所所属の若手タレントの起用が減ったり、バランスを取るために他の事務所の男性グループと共演させたりというシーンは増えるかもしれません。
また、スローニュースのような新興メディアからは、すでに「ジャニー喜多川氏による性加害が野放しになってきたのは、メディアがそれを看過してきたからでもある。」として、ジャニーズ事務所とメディアの癒着を詳細に指摘する報道がはじまっています。
(参考記事:ジャニーズとメディア|SlowNews)
もし、メディア側が自分達のことを棚に上げジャニーズ事務所ばかりを批判して、自分達の行動を変えなければ、当然批判の矛先はメディアに向かう可能性があるわけです。
ある意味、長年のジャニーズ事務所に対するメディアの「忖度」が、ここに来て反動としてジャニーズ事務所の所属タレントの活躍の場を奪う「忖度」に変わる可能性すらあるわけです。
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