この記事は、Yahoo!ニュース個人に9月10日に掲載された「はじまったスポンサーの『ジャニーズ離れ』。長年の『忖度』の反動はどこまで拡がるか。」に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
徳力基彦(とくりき・もとひこ)
noteプロデューサー/ブロガー
新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログとSNSのおかげで人生が救われる。その際の経験を元に、書籍「普通の人のためのSNSの教科書」(朝日新聞出版)を出版。noteやSNSを活用したビジネスパーソンのキャリア構築や、企業の広報やマーケティングのサポートを行っている。
Twitter:@tokuriki、公式サイト:徳力基彦(tokuriki)
ジャニーズ事務所が9月7日に開いた記者会見が、さまざまな波紋を呼んでいます。5月の謝罪動画では性加害の事実認定を避けた藤島ジュリー氏が、今回の会見では明確に事実を認定し永続的な被害者救済を明言したことで、ようやく事態が本格的に動き出したと言えるでしょう。
特に直近で注目されているのが、スポンサー企業の動向です。ジャニーズ事務所側の会見を受けて、複数のスポンサー企業がタレント契約を更新しないことや契約解除を検討していることを発表。これまで、さまざまな報道を受けても目立った対応をしていなかったスポンサー企業が、ここにきて動き出したことは、さまざまなメディアで「ジャニーズ離れ」の象徴として報道されています。
今後注目されるのは、この「ジャニーズ離れ」がどのレベルまで拡がるかということでしょう。
一般人の視点からすると、ここ数ヶ月散々批判がされてきたジャニーズ性加害問題に対して、ずっと対応を保留してきたスポンサー企業が、なぜ今回の会見を受けて契約の見直しを決定したのか、分かりにくい方も多いでしょう。
会見では、東山社長の新体制の中で、団結して再起を目指すと宣言されたのに、この新しい門出の段階で契約を見直すというのは、タレントを裏切る行為だと感じるファンも少なくないようです。
しかし、これは明確にジャニーズ事務所側の会見が招いた結果と言えます。
今回のジャニーズ事務所の会見で注目されていたのは下記の5点でした。
1.否定していた性加害の事実を認めるのか
2.経営体制を刷新できるのか
3.同族経営問題(資本構造)を払拭できるのか
4.社名を刷新するレベルで解体的出直しができるのか
5.被害者が満足するレベルの謝罪や補償ができるのか
今回のジャニーズ事務所の会見では、1の事実認定はされたものの、経営陣は内部からの昇格で、外部から招聘するチーフコンプライアンスオフィサーも誰かは不明。
さらに藤島ジュリー氏100%オーナーという資本構造も当面は変わらず、ジャニーズ事務所という社名も変更しない、ということですので、上記の2〜4は企業改革の視点で見るとゼロ回答に近い結果となっているのです。
またジャニーズ事務所の会見後に実施された「ジャニーズ性加害問題当事者の会」においても、一部に反発の声が聞かれるなど、5の部分についても今回のジャニーズ事務所側の発表内容では全てが収まらないことが明白になっています。
今回の会見の進行を担当したのがFTIコンサルティングという米国系コンサル会社だったことから、今後資本構造等が大きく変わる可能性もささやかれていますが、会見の段階ではビジネス的な目線では何一つ変わらないという印象を受けた企業が多かったはずです。
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