それはGoogleのようなIT業界の巨人も例外ではない。同社の「Googleフォト」はこれまで無制限で無料のストレージ領域をユーザーに対して提供していたが、21年からは無料で使える容量を15ギガバイトまで激減させた。
15ギガバイトを超えるストレージを利用するには、Google Oneの有料プラン加入が必須となった。これにより、多くのユーザーが代替のストレージサービスを探したり、有料プランへの切り替えを余儀なくされたのだ。
無料のノートアプリケーションとして人気のあったEvernoteも、経営難から基本機能の一部を制限し、多くの機能がPremiumやBusinessプランなどの有料プランに移行した。この変更により、ユーザーは代替アプリを探すようになり、競合他社のサービスが利用者を増やしたのである。
これらの事例を踏まえると、もしXが有料化し、無課金ユーザーを冷遇した場合、本格的に多くのユーザーが代替のプラットフォームを探し求め、大量のユーザーが流出する可能性がある。これはTwitterの広告収入にも多大なる悪影響を与えるだろう。アカウントあたりの課金は、複数のアカウント・アイデンティティーを使い分けるユーザーほど重い負担となるため、ヘビーユーザー1人が離脱するだけで、場合によっては数個から十数個のアカウントが消失することにもなりかねない。
PhotobucketやGooglePhoto、Evernoteの事例では、メインのサービスに占める広告収入の割合が非常に小さかったことで、無料ユーザーを犠牲にしても有料化に舵を切ることは合理的であったといえる。
一方で一般ユーザーに対して無料でサービスを提供し、法人からの広告収入を前提とする以上、ユーザーの数や活発さが最重要なのがXだ。無料ユーザーがいなくなれば、Xの広告モデルが成り立たなくなる可能性がある。
そう考えると、マスク氏はXの有料化を機に「広告収入を前提とした無料のSNSアプリ」から脱却することを狙っていると考えられないだろうか? マスク氏はXをスーパーアプリ化させることについてたびたび言及している。
有料化によって、例えばネットフリックスのような映像配信サービスや、ショッピング、決済サービスなどのように機能を満載したアプリへと変貌できれば、有料課金モデルでも成立するかもしれない。
ただし、マスク氏のセンセーショナルなふるまいは、世間の反応を確かめる「観測気球」としての意味合いも強い(マスク氏がTwitterのCEOを辞任したのも、同氏がツイートで行ったアンケート結果によるものだ)。
今回の有料化については、反対を通り越して「デマだと信じたい」レベルの強い拒否反応がユーザーから示されている。そんなユーザー層をふいにするリスクを背負ってまで有料化施策を強行するのだろうか。マスク氏の動向に注目したい。
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