メタが「Quest 3」に込めた野心 どう進化するのか?本田雅一の時事想々(2/4 ページ)

» 2023年10月02日 12時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

同じ目的地に異なる方向からアプローチするアップルとメタ

 MRデバイスといえば、6月にアップルが発表したApple Vision Proが大きな話題になっている。筆者も実際にそのデバイスを使う機会があったが、Quest 3とはよく似た体験をもたらすデバイスである一方で、開発のアプローチは全く異なる。

 価格が5〜6倍も違うのはもちろんだが、最も異なるのはハードウェア開発のアプローチの違いと、最終的な目的に向かう際に重視しているコンセプトの違いだ。

photo アップルが発表した「Vision Pro」=米クパチーノで筆者撮影

 Vision Proは「空間コンピュータ」を標ぼうし、ユーザーが存在する空間に平面的なディスプレイパネルから、3D空間に構築されたコンテンツまで、多様な表現手法でアプリケーションとインタラクションする、次世代の汎用コンピューティング基盤を提供しようとしている。

 一方でメタが重視しているのは、人と人が現実空間と仮想空間が混在する世界でコミュニケーションする場を作ること。それこそが「メタバース」ということなのだろうが、もともとがコミュニケーションサービスであるSNSを出発点にしており、メタらしい。

 Vision ProとQuest Proは、いずれもユーザーが置かれている周囲の情報を収集し、デジタルデータとして再構成、立体的にディスプレイ上に再現する(パススルー映像)という点は同じだが、Vision Proは可能な限り「ゴーグルを装着していない」かのような高い再現性を目指している。

 一方、Questも品質の向上を目指しているものの(実際、Quest 2の10倍以上、Quest Proの3倍以上のパススルー画素数)、ゲームや映像作品を楽しむためのエンターテインメント端末として、より多くの人たちに使ってもらうことを主眼に作られている。

 それは価格の違いでもあるが、究極の目標に向けたアプローチの違いだ。

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