メタが「Quest 3」に込めた野心 どう進化するのか?本田雅一の時事想々(3/4 ページ)

» 2023年10月02日 12時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

売れるエンターテインメント機としての閾値を超えた体験

 Quest 3に関しては、従前のモデルよりも2倍にふれたグラフィックス性能など、スペック面での訴求もあるが、最も変化したのは装着感や装着のしやすさ、見やすさ、メガネとの相性など、いわばトータルの体験の質だ。

 どんなに優れたコンテンツ、ゲームがあっても快適でなければ、続けて使いたいとは思わない。嫌な体験が続けば使用時間は減り、そのうち使わなくなるだろう。

 Quest 2は十分に楽しいエンターテインメント機だったが、標準のストラップで装着を安定させるだけの強さで締めていると、だんだんと不快さが増してしまっていた。オプションのエリートストラップを使えば、大幅に装着感は改善するものの、高価な上に壊れやすいという問題もあった。

 しかしQuest 3に関しては標準ストラップの時点で安定した装着感があり、また多少動き回ってみてもズレが少ない。より高価なストラップなら、さらに快適にはなるのだろうが、40%も本体が薄くなったことが装着感を高めているのだろう、

photo メタの開発者ブログより

 4K以上の解像度となったディスプレイは、左右方向110度と広くなった有効視野角の中でも高精細で、細かな文字なども十分に表現できる。

 価格は約500ドル(正確には499.99ドル)とQuest 2に比べて最低価格が200ドル上がっているが、従来のゲーム機はもちろん、高性能なゲーミングPCの世界とも全く異なる方向でエンターテインメント性を発揮することを考えれば、決して高いとは感じない(残念なのは円安が続く現状、日本ではQuest 2発売初期の2倍の価格になってしまうことだが)。

 3世代目ということもあり、過去に開発された500本のVRゲームライブラリが存在することに加え、年末までには100本の新作ゲーム(あるいは既存ゲームのアップデートという形で)MR対応ゲームが登場することも、この製品を後押しするだろう。

 Quest 3はあくまでもゲーム、コンテンツを再生する手軽なゴーグル型デバイスだ。Vision Proのような汎用コンピュータとしての普及は狙っていないが、それでも(少なくとも北米では)ある程度、成功したゲームプラットフォームになるだろう。

個性的なAIとQuestの世界が交差する未来

 メタは今回のイベントで、同社がオープンソースで開発している大規模言語モデル(LLM)「Llama2」をベースにしたAIアシスタントサービスを発表した。同時に個性を持たせた28種類のカスタムAIキャラクターを利用可能にするという。

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 あるキャラクターは総合格闘技のファイターで有言実行タイプ、別のキャラクターはアニメ好きの修行中セーラー戦士、複雑な推理物語が大好きな探偵、フィットネスや瞑想が大好きなフィットワーカー、恋愛の達人にプロゴルファー、中にはファンタジー世界のダンジョンに住むマスターなどもいて、それぞれに米国人にはなじみの著名人をモデルに強化学習がされている。

 メタはこれらのAIキャラクターとチャットするだけではなく、Facebook MessengerやWhatsApp、Instagramのメッセージでやりとりすることを可能にする。グループメッセージの中に彼らを入れ、料理好きのグループのやりとりに料理に詳しいAIが口を挟んでくる、なんてことができるようになる。

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 企業向けにはカスタムのキャラクターを作成し、それらメッセンジャーで自動応答するLLMを作るためのAI Studioというツールを提供するが、エンドユーザーにも自分自身で新しいLLMを構築する手法が用意されるという。

 AI Studioは数週間内に提供が始まるようだが、エンドユーザー向けサービスは来年までに順次β版からサービスが立ち上がる。

 これらの先には何があるのだろうか?

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