アップル「Vision Pro」は「Meta Quest」と何が違うのか本田雅一の時事想々(1/4 ページ)

» 2023年06月09日 16時30分 公開
[本田雅一ITmedia]

 アップルの新コンセプトコンピュータ「Apple Vision Pro」。6月の開発者イベント「WWDC」は本来ならば、年末に向けて多くのユーザーが存在するiPhone、iPad、Macの近未来を占う上で重要な情報が出てくるイベントだが、今回はまだ誰も見たことがない地平を切りひらく覚悟を、アップルが見せた。

photo アップルが開発者イベント「WWDC23」で発表した「Apple Vision Pro」=米カリフォルニア州クパチーノのアップル本社で筆者が撮影

 身近な話題でいえば、まだ多くのユーザーが存在するだろうiPhone 8やiPhone Xが新OSのアップデート対象外となることや、それ以外の新しい機種がどれほどソフトウェアの力でより使いやすくなるのかの方が興味深いはずだ。実際にニュースの閲覧数も多い。

 しかし米カリフォルニア州クパチーノにあるアップル本社で、Vision Proのコンセプトに触れ、さらにその体験をしてみると、頭の中からこの新しいコンピュータが離れなくなる。

 この製品がどのようなスペック、構造、技術でできているかは、多くのレポートがある。また日本で入手可能になるのは来年後半のことだ。それにもかかわらず、なぜこれほど頭から離れない存在なのか。そして、Vision ProはかつてのMac、iPhone、iPadと同じように、市場に一大旋風を引き起こし、新しい市場を生み出すのか。

 このコラムでは、来年発売されるVision Proの詳細だけではなく、新しいジャンルとして確立する可能性が高い“空間コンピュータ”について考察し、そのビジネスの可能性について考えてみることにしよう。

技術的困難への立ち向かい方

 Vision Proが試みているのは、人間の視覚、聴覚に介入することでコンピュータシステムからの情報をわれわれが過ごしている空間に投影するというものだ。そのために「ゴーグルをかぶるのか」という実現方法に関して異論、疑問を持つのはもっともなことだ。

 将来、あるいはもっと良い形で視覚・聴覚に介入する方法が生まれるかもしれない。しかしVision Proは、現在、量産可能な民生機としては最高の形でそれを実現しようとしている。

 視覚全体をコンピュータのディスプレイとして仮想的な世界を見せ没入感をもたらすデバイスとしては、旧Facebookが買収したOculusが世の中への周知の面で大きな役割を果たしてきた。

 VRディスプレイとして生まれたOculus Riftは、現在、Meta Questシリーズというコンピュータ内蔵のスタンドアロン型に収斂(しゅうれん)、ディスプレイとの兼用デバイスとして、先日は第3世代モデルが発表されたばかりだ。

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