メタが「Quest 3」に込めた野心 どう進化するのか?本田雅一の時事想々(1/4 ページ)

» 2023年10月02日 12時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 Meta(メタ)が、米カリフォルニアの本社キャンパス内で「Meta Connect」を開催した。このイベントでは、オープンソースで開発を続けている独自の大規模言語モデル「Llama2」や独自の画像生成AI「Emu」などのセッションもあったが、最も大きなテーマはVR(仮想現実)とMR(複合現実)を低価格に実現した「Quest 3」だ。

photo イベント「Meta Connect」で発表した「Quest 3」=米カリフォルニアのメタ本社で筆者撮影

 基調講演でマーク・ザッカーバーグ氏が発表したQuest 3は、今年6月に一部仕様などはすでに公開していた。すでに体験記などが掲載されているが、VR/MRの戦略は、前述したメタのAI戦略とも無関係ではない。

 メタのメタバース事業は、その社名が変更された頃から「収益の見込みが薄い領域に巨額投資をしている」と報道され、想定よりも市場規模の拡大が遅いと言われ続けている。

 しかしMeta Connect全体を通して感じられるのは、イベントで発表したQuest 3、新しいAI技術、新型スマートグラス(Ray-ban Meta Smart Glass:日本での発売未定)などの先に、コミュニケーションサービスの大きなイノベーションがある、という同社の確信である。

photo 「Quest 3」=メタのニュースリリースより

“お買い得なVRゲーム機”の先に見据える未来

 VRゴーグルというジャンルは、メタが買収したOculus Riftに始まっているが、当時はVRコンテンツやゲームの制作から手探りで、それを楽しむために高性能なPCとVRゴーグルの両方をそろえて数千ドルという、まさに趣味のための新しい実験的な取り組みだった。

 その後、Oculus Questがおよそ500ドルで登場。本体のみでVRゲーム、コンテンツを楽しめるようにしたことで気付きが広がった。Quest 2は300ドルに下がり、ここで大きくゲームデバイスとしての認知が広がった。

 Beat Saverという超人気ゲームが生まれたことも大きいが、メタはハイエンドのゲーミングPC向けVRゴーグルの開発をやめ、単体で手軽に楽しめるQuestの開発にリソースを集中させることになる。

 企業向けにMR環境で共同作業や開発を行うためのデバイスとして、視線追跡や表情検出を行えるQuest Proも開発しているが、VRあるいはMRというジャンルを開拓するために、一貫して(可能な限り)カジュアルにこの世界に触れる機会を増やそうとしている。

 これは戦略であると同時に、メタ自身が確信していることなのだろうが、体験の質を可能な限り高めながらも、ギリギリのラインでハードウェアの価格を引き下げ、より多くのユーザーに使ってもらう。新しい価値を生み出す開発者たちが魅力的だと感じる性能と、同じく魅力的だと感じてもらえるだけの市場規模を同時に創出しようというわけだ。

 そうした意味で、VRというジャンルでQuest 2は成功作だった。実際、実にお買い得なVRゲーム機だったからだ。同時期にあったPlayStation VRが成功とはいえなかったことからも、その方向性は間違っていなかったのだろう。

 Quest 3はその延長線上にあるが、その作りは「より良いQuest 2」であると同時に「Quest 2のその先」へと誘う製品に仕上がっている。

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