「一風堂」監修のラーメン店が人気 人通りが少ないところで、なぜ?週末に「へえ」な話(1/3 ページ)

» 2023年09月30日 09時30分 公開
[土肥義則ITmedia]

 日本海に“ゲンコツ”のような形をして突き出た半島がある。なまはげで有名な男鹿市だ。

 ただ、残念ながら人口が減っている。人口減少率ナンバーワンの秋田県の中でも、特に減少が著しい場所である。人口は1955年の5万9955人をピークに減少していて、2015年には2万8375人とほぼ半分に。

 その後も減っていて、20年には2万6886人である。国立社会保障人口問題研究所によると、40年には1万2784人まで減少するといわれている。65歳以上の高齢者の割合が50%を超え、21年の出生数は70人だったのだ。

 こうした状況なので、街中を歩いている人は少ない。例えば、駅前。「かつて栄えていたんだろうなあ」といった雰囲気が漂っていて、たくさんのお店が並んでいる。しかし、その多くはシャッターが下りたまま。

 「このままではいけない。なんとかしなければいけない」ということで、秋田の酒造会社で働いていた岡住修兵さんは、クラフトサケの醸造所「稲とアガベ社」を立ち上げた。日本酒をつくることで、仲間が増えるのではないか。さまざまな産業が立ち上がれば、仕事が生まれるのではないか。そうすれば、男鹿市がかつてのように再生するのではないか。こうした発想で、駅前を中心にさまざまな取り組みを始めているのだ。

「稲とアガベ」の醸造所。JR男鹿駅の旧駅舎を利用
醸造所の中

 新参者がいきなり日本酒をつくるのは、法律や規制の面で難しい。という背景もあって、同社は「その他の醸造所」(穀類、糖類を原料として発酵されたもの)カテゴリーとして、「どぶろく」などをつくり始めた。それだけではない。観光客が男鹿駅で降りても、食事をするところがほとんどない。というわけで、醸造所の隣にレストランをオープンしたのだ。

醸造所の隣にレストランをオープン

 話はまだ続く。駅前には、かつて旅館もあって、ラーメン店もあって、パン屋もあって、ほかにもさまざまな店が並んでいた。しかし、いまはない。この現状をどのように受け止めているのか、住民に聞いたところ、次のような答えが返ってきた。

 「ラーメンを食べたい」「パンを買いたい」――。しかし、店がない。閉店した理由を調べたところ、「売り上げが見込めない」とか「赤字が続いているから」ではなく、「(高齢などによって)疲れたから」という声が多いことが分かってきた。

 そんな話を聞いているうちに、「自分もラーメンを食べたい」と感じるようになってきた。しかし、誰もやってくれない。であれば、「自分たちでラーメン店を始めればいいのではないか。2023年にオープンしますよ」と言っていたのが、22年のことである。

 さて、ラーメン店は本当にオープンしたのだろうか。

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