今後、日本のマンガ・アニメ・IPビジネスがさらに発展していくためには、いくつかの課題があると考えています。
マンガの新しい形として、スマートフォンに最適化された縦型カラーマンガの「Webtoon」が韓国発で誕生し、アニメも縦型・短尺のコンテンツが中国発のTiktokをはじめとする動画サイトで続々と増え、視聴されています。
日本のクリエイターやプロデューサーもこのような新しいデバイスやテクノロジーに対応してコンテンツを創っていくことが求められます。日本の場合、従来のマンガ・アニメのコンテンツ・フォーマットが強すぎるのですが、そこにこだわらない新しい挑戦が必要だと感じています。
漫画家やアニメ制作に携わる人=創る人の数に対して、作品を広げる/流通させる人、ビジネスとして売る人が圧倒的に少ない点も課題です。その経営・財務戦略を描けるような人や会社も少ないのが現状です。多くの作品を作っても、適切な価値でユーザーや市場に届け、収益に還元できない限り、クリエイターにも還元できません。
今後、日本のマンガ・アニメ・IP経済圏は、海外市場へシフトしていきます。一方で、日本のコンテンツ会社やクリエイターは、海外向けにライセンスする際の交渉力が弱く、外からデータで見えているIP収益額に対して、実際に日本のIPホルダーが受け取っている金額が少ないというケースはよく見受けられます。
韓国のK-POPやドラマの世界への広がり方を見ると、日本でももっと他業種でマーケティング、流通、販売、戦略、ファイナンスの経験がある人材がIPビジネスへ流入してくる必要があると思います。
20年に日本サッカー協会(JFA)は、ドイツのデュッセルドルフに、ヨーロッパで活躍する日本人サッカー選手をサポートする拠点を作りました。直接現地で感じること、現地だからできる交渉などは多いはずです。実際、JFAは、22年のカタールW杯前の強化合宿をデュッセルドルフで行い、また、直近23年9月にドイツで行われた親善試合、日本対ドイツ戦は、W杯で日本に敗れたドイツからの招待試合(1億円程度のギャランティと交通費/宿泊費負担)を勝ち取っています。
マンガ・アニメ・IPビジネスにおいては、海外で広げること・売ることに特化した人材が少ないのと同じくらい、日系エンタメ企業の現地法人や政府の出先機関などはまだまだ少ないのが現状です。
マンガやアニメのイベントは世界各国で行われていますが、筆者自身もエンタメ×テック領域でMinto社として海外に3法人設立した経験上、拠点作りの重要性を感じています。ソフトウェアやコンテンツは国境を超えますが、その先の現地企業との提携や交渉など、継続的に根付いていくビジネス作りには、拠点や法人が必要だと感じています。
このような日本のアニメ・マンガ・IPビジネスの可能性を理解した上で、さまざまな課題を認識して解決していけば、日本発のアニメ・マンガ・IPビジネスは必ず、日本再成長の旗印になるでしょう。
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