日本のマンガ・アニメは世界一? 「10年後も安泰」とは言えないワケ(1/4 ページ)

» 2023年10月06日 07時00分 公開

 日本のソフトパワーの代表格であるマンガ・アニメ。コロナ禍に室内で過ごす時間が増えたことも相まって、日本発のエンタメ作品は世界的な人気を博しています。その後の映画『THE FIRST SLAM DUNK』や『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』などの世界的な大ヒットは記憶に新しいでしょう。

 とはいえ、日本のマンガ・アニメやエンタメビジネスが順調に発展していくかといえば、決して楽観視できません。韓国や中国をはじめ、従来の形式にとらわれないエンタメコンテンツや、ビジネスの形が台頭しています。

 エンタメ分野で日本がこれから世界をリードするために必要な視点とは何なのでしょうか。SNSコンテンツやIPプロデュース事業などのエンタメビジネスを手掛けるMinto(東京都港区)代表取締役の水野和寛が解説します。

エンタメ分野で日本がこれから世界をリードするために必要な視点とは――(ゲッティイメージズ)

水野 和寛(みずのかづひろ)/ Kazuhiro Mizuno

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 株式会社寺島情報企画でモバイルコンテンツ事業を立ち上げ、さまざまなサイトをプロデュース。中でもデコメサイトは月額有料会員で約100万人の日本一のサイトになり、絵文字、デコメブームを牽引した。

 その後、スマホアプリ事業を立ち上げ、株式会社テクノードを設立。ヒットアプリを多数生み出し、2010年のAppStore年間ゲームランキング1位の「Touch The Numbers」を始め、手掛けたアプリのダウンロード数は1000万を超える。

 11年に株式会社クオンを設立。インターネット発のキャラクター事業を展開し、世界中のチャットアプリと提携し、スタンプのダウンロード数はおよそ60億件で世界一。中国、タイ、ベトナムに支社を展開中。18年からブロックチェーン/NFT領域で事業を開始し、CryptoCrystalのNFTは世界的なトレンドに。21年からThe Sandboxなどのブロックチェーン系メタバースとコンテンツ提携。22年1月に国内No.1のSNS漫画事業を手がけるwwwaapと経営統合し、株式会社Minto代表取締役に。


世界で日本のマンガ・アニメ人気が加速

 2019年からのコロナ禍での外出自粛により、「自宅エンタメ需要」が高まり、Netflix、Disney+、Amazon Prime、Crunchyroll(クランチロール)などの世界的な動画配信プラットフォームは、大きく登録者数を増やしました。

 この間、これらの動画配信プラットフォームの中で大きく視聴数を伸ばしたのが、日本のアニメです。直近の『推しの子』や、この数年での『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』などのヒットアニメ作品は、TVより圧倒的に早いスピードで、動画配信で世界のアニメファンへ広がっていきました。また、新しい作品だけでなく、過去のアニメ(アーカイブ)作品も同様で『ドラゴンボール』『ONE PIECE』などのアニメ作品が、コロナ禍にあらためて動画配信サイトで視聴されました。

 コロナ禍が明けて映画館に観客が戻ってくると、日本アニメの世界的なトレンドはさらに顕著になりました。22年6月公開の『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は国内の興行収入が25億円、全世界では国内を大幅に上回る138億円を突破。同年8月公開の『ONE PIECE FILM RED』は国内で197億円の興行収入、全世界では319億円に達しました。

 その後も『すずめの戸締り』(国内147億円、全世界475億円)、『THE FIRST SLAM DUNK』(国内155億円、全世界300億円超)など、日本発のアニメ作品が世界を席巻しました。

 アニメ制作ではありませんが、日本発のIP(知的財産)として最大ヒットとなったのが、23年4月に公開された『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』で、全世界での興行収入は1996億円にまで達しました。

 この2年間の日本のマンガ・アニメ・ゲームなどのIPによる映画の世界的大ヒットは、日本のエンタメビジネス史上においても、エポックメイキングだと思います。特徴的な共通点は海外での収益の大きさで、大半の作品が国内よりも海外の興行収益が上回っています。

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