「値上げ=客離れ」はどうなった? ココイチの業績が好調なワケスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2023年10月10日 11時20分 公開
[窪田順生ITmedia]

値上げで叩かれても

 分かりやすいのは、ユニクロだ。もう忘れている人も多いだろうが、昨年夏にその年の秋冬物、フリースなどを最大で1000円値上げするというニュースが大きな話題となった。(参照リンク

 「安いニッポン」では、うまい棒が10円から12円に値上げするだけでも大騒ぎなので、当然この「大幅値上げ」は否定的に伝えられた。

ユニクロの値上げが話題に(提供:ゲッティイメージズ)
(提供:ゲッティイメージズ)

 評論家も厳しい苦言を呈して、ネットやSNSでは「1000円値上げで、あえてユニクロを選ぶ意味がなくなる」とか「値上げしすぎて高級メーカーになる」などやはりボロカスに叩かれた。

 しかし、フタを開けるとこの値上げはそれほどネガな影響はなかった。ファーストリテイリングの22年9月〜23年2月までのグループの決算で、ユニクロの最終利益が、同じ時期では「過去最高」になったと発表したのである。

 値上げでボロカスに叩かれても、数字的には「好調」という、今回のココイチと全く同じ現象が起きているのだ。これはつまり、ネットやSNSでの「値上げなんか許せん! もう行きません!」「消費者をバカにするな!」という怒りの声が、かつてほど消費者の声を正確に反映しなくなったということではないのか。

 これまで値上げをした企業はネットやSNSの「高い! 庶民切り捨てだ」「もう行けない」という声を恐れた。マックや鳥貴族のように値上げをしてネットやSNSで批判されると、確かにその通りに客離れが一定期間続いて、業績にも悪影響を及ぼすことがあったからだ。

 しかし、今はネットやSNSでボロカスに叩かれても、現実世界でそこまで深刻な「客離れ」は起きない。先ほどの調査が示すように、値上げを叩くのはマイノリティーであって、消費者の大多数は「値上げ企業」に悪印象を抱かなくなった。つまり、「容認」しているのだ。

 この消費者意識の変化も、冷静に考えてみれば当然かもしれない。

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