ドコモが「パケ詰まり」対策に300億円投資 それでも「後追いの印象」が拭えない理由房野麻子の「モバイルチェック」(1/2 ページ)

» 2023年10月22日 09時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 今年に入って、NTTドコモのネットワーク品質に対する不満が高まっている。同社が「データが流れない」といった不満の声を認めたのは、4月下旬の記者向け説明会でのことだ。その際は、都市部の混雑地域を中心に対策を行い、今夏中に改善すると明言。7月下旬には、新宿、渋谷、池袋、新橋の4エリアの通信品質について改善状況を報告した。同時に、今後も抜本的な品質改善に向けた取り組みを全国レベルで行うとも説明していた。

 そして10月、ドコモは品質改善の取り組み、成果について説明するとともに、将来的なデータトラフィックの需要増加も見据えて300億円の先行投資を行うことを明らかにした。

photo 300億円を先行投資して全国2000カ所、鉄道動線のネットワーク改善を集中的に行う=ドコモの資料より

LLMを活用してSNS情報を分析

 同社によると、都内4エリア(渋谷、新宿、池袋、新橋)ではスループットが向上し、5Gエリアも拡大したという。

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photo 渋谷、新宿、池袋、新橋エリアのスループットが改善。それに伴って遅延も少なくなっているという

 今後の対策は、駅や繁華街、住宅街など全国2000カ所以上の「点」と、乗降客数の多い全国の鉄道動線の「線」で集中的に実施する。また、エリア品質データを活用した予兆検知や、SNS上の情報に基づき対策が必要な場所の把握を強化する。

 以前から、トラフィックデータやユーザーからの申告情報、「ドコモスピードテスト」アプリの位置情報を掛け合わせた予兆検知は行ってきたが、新たにドコモが開発した生成AIプラットフォーム「LLM付加価値基盤」を活用してSNS情報を分析する。そうして対策が必要な場所がより具体的に、かつ素早く特定できるようになるという。今回発表した2000カ所、鉄道動線の集中対策も、この分析によって導き出した。

photo 新たにドコモのLLM付加価値基盤を活用してSNS情報を分析し、対策が必要な具体的な場所を特定する

 基地局設備も強化する。小型・低消費電力で、同一タイミングで複数ユーザーとの通信が可能な「MU-MIMO」(マルチユーザーマイモ)に対応したMassiveMIMO装置(100本以上のアンテナ、ビームフォーミングという電波を送る技術を組み合わせた装置)を導入している。また、端末から基地局への上り通信経路で、5Gか4Gかを選択する機能をさらに高度化する。これによって、セルエッジ(隣接する基地局のエリアの境界線上。どちらの基地局からも遠いため通信品質が低下する)でスループットが2倍になったという。

photo MU-MIMOに対応したMassiveMIMO装置を導入。また、5G上り品質を改善する

 これらに加え、アンテナの角度調整や基地局の出力調整、指向調整といった、以前からのエリアチューニング、5G/4G両方の設備増設による対策も促している。

 すでに全国2000カ所と鉄道動線を集中的に対策しており、9月末時点で約70%の対策を実施。12月までに90%以上、対策を完了させるという。300億円は主に設備の新設・増設に使われ、基地局数は「1000局以上になる予定」(ネットワーク本部長・常務執行役員の小林宏氏)だ。

後追いの印象が拭えない対策内容

 小林氏は「可能な限り早く先行投資は進めていって、しっかりネットワークの強化を図っていきたい。お客さまに安心してご利用いただけるネットワーク品質に仕上げていきたい」と話す。しかし筆者は、どうしても「後追い」の印象が残った。

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