「今年も」値上げ、前年から16社減 外食企業の価格戦略は

» 2023年10月30日 10時50分 公開
[サトウナナミITmedia]

 食料品価格の高騰や最低賃金の上昇といったコスト高を背景に、外食企業は2022年以降、相次いで値上げに踏み切った。一方で、外食主要100社のうち23年も値上げを実施・表明した企業は4割となり、前年から16社減少したことが、帝国データバンクの調査で明らかとなった。価格戦略をめぐる企業の動向とは――。

photo 「上場外食主要100社」価格改定動向調査(2023年10月)

「再値上げ」した外食企業の特徴は

 上場する外食主要100社における、23年以降の価格改定計画(値上げ、実施済み含む)を調査した結果、10月18日までに値上げを表明した企業は42社だった。22年は同100社のうち値上げを実施・表明した企業は58社と約6割を占めたのに対し、23年では約4割の水準にとどまった。

 一方で、22年に値上げを行った58社のうち約9割の37社が再値上げを実施。牛丼やハンバーガー、うどんなど、メニュー単価が比較的低く、原材料価格の上昇を受け止める余力に乏しい「低価格チェーン」での値上げが多くを占めた。

photo 外食産業の値上げ動向(帝国データバンク調べ)

 値上げの要因としては引き続き「食肉」「小麦粉」「原油」の高騰による影響が目立った。また、円安による輸入コストの上昇や、一部企業ではアルバイトなどの人件費増を理由としたケースもあり、値上げ要因は食材価格の高騰以外に広がっている傾向が見られた。

値下げに踏み切る外食企業も

 反対に、値下げに踏み切った外食企業も見られた。一部メニューに限るといったケースも含め、18日時点で少なくとも6社が23年中の値下げなどを発表。また、22年に値上げした外食企業のうち、23年1〜9月の客数動向を開示している企業35社を見ると、9カ月間全てで前年を上回ったのは37.5%にとどまった。

 同社は「値上げしていない企業に比べて客数の低下に直面した企業が多かったことも、追加での値上げ見送りや値下げへの方針転換の要因になった可能性がある」と分析している。

photo 2023年以降の既存店客数(帝国データバンク調べ)

外食への支出は回復傾向に

 外食への支出は回復傾向に転じていることが分かった。総務省の家計調査によると、23年1〜8月における一般外食への支出額は1世帯当たり月平均で1万3000円を超え、コロナ前の19年(1万4050円)に並ぶ勢いで推移した。

photo 1世帯当たりの「一般外食」支出額(帝国データバンク調べ)

 一方で、コロナ前5年間の平均額と23年の支出額を比較すると、ハンバーガーや喫茶店、ラーメンなどの中華そば分野ではコロナ前を上回って推移する一方、居酒屋などを中心とした外食シーンでの酒類消費は大幅に落ち込むなど、メニュー別で回復度合いに差があった。

photo 分野別の外食支出(帝国データバンク調べ)

 調査期間は10月18日まで。上場する外食主要100社を対象とした。

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