「ゆで太郎」の“弟分”「もつ次郎」が、急成長しているワケスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2023年11月07日 11時41分 公開
[窪田順生ITmedia]

外食チェーンがつまづくのは拡大路線

 (2)の「拡大路線を避けながら現場のモチベーションを上げられる」は、説明が必要だろう。実は外食チェーンがつまづく最大の理由は拡大路線だ。少子高齢化で毎年、鳥取県と同じ人口が減っていくこの国で、外食チェーンが年々店舗を拡大できるわけなどない。

 しかし、一方で成長している外食チェーンは、事業を拡大していかなければいけない部分もある。そのあたりのジレンマを、ゆで太郎システムの池田社長は過去こう述べている。

 『飲食で上場すると必ずブチ上げるでしょ。年間100とか200店増とかって。必ずおかしくなる。お金はあるけど、人がついていけなくなるでしょう。そんな簡単ではないですよ。だいたい儲からないんだからね(笑)。「飲食って儲かりますか」という人には、「儲からないよ」って伝えますね。(中略)

 1店舗増えたら店長を1人増やさないといけないわけですが、そこが粗製濫造的になりがち。でも店舗数が増えていかないと従業員は面白くないし、チャンスを与えればやる人もいる。そこはなかなか難しいところだと思います』(東洋経済オンライン 19年9月6日)

「ゆで太郎」のトッピングメニュー

 つまり、外食チェーンにとってある程度の規模以上の拡大路線はかなりリスキーだが、従業員のモチベーション向上や、店長や管理職ポスト新設のため、致し方なく店を増やしている部分もあるというのだ。

 このような池田社長の経営者としての考えを理解すると、「もつ次郎」が急激に増えていることが何を意味するのか見えてこないか。

 そば屋の「ゆで太郎」がもつ煮定食などを始めて、ちょい呑み需要を取り込むのは新しいチャレンジなので、従業員たちにとってもいい目標になる。当然、新しい人材も加わるので組織も活性化される。

 ただ、これらを実現するために、新店舗をつくって展開するのはかなりリスキーだ。立地を選んで賃料を払って、内装工事などをするのでカネがかかる。また、新しい店で働く人材を獲得しなければいけないことに加えて、教育や研修もしていかなければいけない。そこまで大きな投資を全国各地で展開をすれば、赤字にならないように数字を追い求めるあまり「粗製濫造的」になってしまう恐れもある。

 しかし、「併設型」ならばそのリスクはだいぶ軽減する。

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