(1)の「『ゆで太郎』にない『ちょい呑み需要』を取り込める」に関しては、詳しい説明はいらないだろう。今の時代、外食チェーンはただ食事を提供するだけでではなく、さまざまな付加価値を提供しなくてはいけない。その代表が「ちょい呑み」だ。
つまり、安くておいしい食事を提供するだけではなく、仕事帰りのサラリーマンや、学生が気軽に立ち寄って酒とつまみで楽しい時間を過ごせるようにした店が成長していくのだ。
その分かりやすい例が「日高屋」と「幸楽苑」だ。これまで互いに安くてうまいラーメンを提供することでしのぎを削ってきたライバルだが、駅近店舗の多い日高屋は近年「ちょい呑み需要」を取り込んで順調に成長している。一方、「幸楽苑」はロードサイド型店舗が多いということもあって、なかなか「ちょい呑み客」を囲い込むことができず、苦戦している。(関連記事)
これを踏まえて「ゆで太郎」を見ていこう。基本的にそば屋なので、さっとかき込んで去っていく客が圧倒的に多い。アルコールを提供する店舗もあるが、ガッツリと酒の肴(さかな)になりそうなものは少ない。つまり、「ちょい呑み需要」を取り込みにくい業態なのだ。
しかし、同じスペースに「もつ次郎」が併設されることで、この弱点が克服される。もつ煮、もつ炒め、アジフライ、唐揚げなどがあるので十分にちょい呑みができるのだ。しかも、「ゆで太郎」にとっても新客獲得などのシナジー効果がある。
筆者は都内の「ゆで太郎」「もつ次郎」併設店によく行くのだが、そこでは最初に「もつ次郎」のもつ煮や唐揚げでちょい呑みをしてから、シメで「ゆで太郎」でもりそばを食べるという人をちょいちょい見かける。もともと「町のそば屋」には、酒と肴を楽しんでシメでそばを食べる客が多い。が、「ゆで太郎」は立ち食いイメージが強いので、「そばを食べるだけの店」だった。それが「もつ次郎」が併設されたことで、本来の「町のそば屋」に近づいたというわけだ。
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