「NTT法廃止議論」はどこへ向かうのか NTTと携帯3社、それぞれの主張(1/2 ページ)

» 2023年11月08日 08時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 現在、自由民主党や総務省で「日本電信電話株式会社等に関する法律」(NTT法)の在り方が議論されている。

 この議論はもともと今夏、政府内で防衛費の財源確保を目的としてNTT株を売却する議論が始まったのがきっかけだ。しかし、自民党の特命委員会が「防衛財源の捻出という視点を大きく超えて、わが国の情報通信産業の国際競争力強化の観点からNTT法の在り方について検討すべき」と提言したことを踏まえ、NTT法のあり方に関するプロジェクトチーム(PT)を設置。いつしかNTT法の見直しについての関心が高まっていった。

NTT法の廃止を望むNTT 「こうした議論は20年前に終わっている」

 プロジェクトチームは10月19日、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯電話事業者4社に法改正についてのヒアリングを実施。そして同日、NTTは単独で、他3社は合同で、NTT法の見直しについての考えを説明した。

photo 自民党PTのヒアリング後、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの3社は合同で説明会を開催。各社長自らNTT法に関する考え方を説明した

 NTTの考えのポイントは主に3つだ。まず、NTT法で定められている研究開発の推進・普及責務(研究成果の開示義務)は、NTTが中心となって推進している光電融合技術「IOWN(アイオン)」などの研究開発をパートナーと連携して展開していく上で、経済安全保障および国際競争力強化の支障となることから撤廃すべきと主張している。

 2つ目は、(固定)電話の役務を日本全国にあまねく、安定的に供給する責務(ユニバーサルサービス義務)についてだ。NTTは、固定電話に限らず、音声・データ通信を、固定・無線・衛星などを用いて、各地域に最も適した方法で最も適した事業主体が担うべきと主張。また、NTT法で定められている固定電話サービスを、電気通信事業法で定められているブロードバンドサービスのユニバーサルサービス義務に含め、海外の主要国と同様に電気通信事業法に統合すべきとも主張している。

 NTTの島田明社長は11月7日に開いた2023年度第2四半期決算会見で、「世界各国を見ても(NTTのような)特殊法人に対する法律はない。世界でこうした議論は20年前に終わっている。世の中の方向が変わっているのだから、日本も未来に向けて進むべき」と話している。

 3つ目は外資規制について。NTT法では、NTT持株会社の外資比率を3分の1未満と定めた出資規制や、日本国籍を有しない人はNTT持株会社やNTT東西の役員になれない外国人役員規制がある。NTTは、この規制をNTTだけに課すことは無意味と主張している。経済安全保障の観点からは、外為法やその他の法令で、主要通信事業者を対象とすることを検討すべきとした。

photo NTT法に対するNTTの考え(説明会資料より)

 島田社長は、NTT法の役割はおおむね完遂されたとし、NTT法は廃止すべきという考えを示している。さらに「NTT東西は今後も他事業者に対して公平にネットワークの提供を行っていく」「NTT東西とNTTドコモを統合する考えはない」とも話している。

「廃止」は反対、「改正」は賛成の3社

 KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの3社も自民党PTヒアリングがあった10月19日、合同で説明会を開催し、NTT法のあり方についての考えを各社長が説明した。

 携帯3社は、NTT法の「廃止」には反対だが、「見直し」には賛成の立場だ。

 見直すべきとしているのは、研究成果の開示義務や社名の変更に許可が必要なこと、外国人役員規制といったものだ。これらは時代に合わない古い規律だとして見直すべきとしている。

 一方、国益・国民生活への影響の観点から、極めて影響が大きい次の3項目は特に慎重な議論が必要というのが3社の見解だ。

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