一時帰国先で年間最長90日間テレワーク可能──。KADOKAWAが外国籍社員向けにこんなリモートワーク制度を導入した。IP(知的財産)事業の海外展開を進める中、外国籍社員の就業環境を整備する狙いがある。
制度名は「一時帰国サテライトワーク制度」。外国籍社員の声を反映し、実現した。期間は1回につき最長30日間、年度中3回まで利用できる。一時帰国中の利用を想定しているため、対象は旅券保有地のみ。期間中は現地での在宅勤務を原則とし、社員は現地時間の午前5時から午後10時までのうち7時間勤務する。
出張や旅行など社員の海外渡航に対応したテレワーク制度を導入する企業もあるが、日本の就業時間に合わせた対応を求めるなど時差を無視したケースもある。そうした制度と比較するとKADOKAWAは現地時間に合わせた勤務となる。外国籍であれば、正社員だけでなく、契約社員でも制度を利用可能だ。
導入の背景には事業のグローバル化がある。同社の2023年3月期通期の売上高は前年比15.5%増の2554億2900万円。このうち、日本のIP人気で海外での売上高比率は20.5%に上昇した。同期の決算資料によると、同社は日本発のIP展開に加え、海外発のIPを創出し、世界展開するなど海外事業を強化中。事業の拡大とともに日本と海外拠点の橋渡し役を担う外国籍社員の重要性も高まっている。
一方で母国に残した家族や友人と長期間会えず、社員が寂しい思いを募らせるなど、母国を離れて働く外国籍社員特有の課題があったという。そこで不要不急の場合でも帰国先でリモートワーク可能な制度の導入を決定。一時帰国中の母国で家族と生活しながら、グローバル人材にとっての就業満足度の向上を目指す。
実際に利用した社員からは「母国を離れて東京で生活する期間が長くなり、ここ数年、両親の誕生日や墓参りなど、家族にとって大切な年中行事にほとんど参加できていなかった。両親が自分の仕事ぶりをそばで見ることができるため、日本でどのような仕事をしているか理解してもらうきっかけになった」(台湾出身の40代)、「コロナ禍で帰省がなかなかできず、数年間家族に会えない状況が続いていた。日々の生活を通じて、中国現地のトレンドなどの動きをリアルに感じることができ、情報収集と新たな企画の考案が実現できた」(中国出身の30代)などの意見が出ているという。
日本と海外では課税が発生する滞在日数の上限が各国で異なる。現在は多くの国で納税の義務が発生しない90日を上限にしているが、同社は利用状況を確認しながら上限日数について柔軟に検討していく方針を示している。
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