回転寿司の代名詞「1皿100円」は消えるのか “最後の砦”かっぱ寿司・はま寿司のこれから両者の共通項とは?(3/3 ページ)

» 2023年11月14日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

客足が戻らないかっぱ寿司、拡大を続けるはま寿司

 何かと共通点が多い両者だが、近年の業績では明暗が分かれている。20年3月期から23年3月期までの業績は、次の通りだ。なお、はま寿司は非上場で詳細を公開していないため、同チェーンが主力を占めるゼンショーHDのファストフードカテゴリーの数字を記載した。

カッパ・クリエイト(回転寿司事業売上):約625億円→約523億円→約529億円→約563億円

ゼンショーHD(ファストフードカテゴリー売り上げ):約1500億円→約1385億円→約1506億円→約1926億円


 かっぱ寿司が低調な一方、はま寿司はコロナ禍でV字回復を遂げ、好調なことが分かる。店舗数でも、かっぱ寿司が21年7月から23年7月にかけて311→292と減少しているのに対し、はま寿司は540→581と拡大した(いずれも日本ソフト販売調べ)。

はま寿司はサイドメニューでボンゴレパスタも提供している(出所:はま寿司公式Webサイト)

 はま寿司はコロナ禍からの回復という流れに乗りつつ新規出店を続け、業績を伸ばしたようだ。対するかっぱ寿司は、不採算店を閉鎖したほか、既存店でも客足が戻らなかったことで業績が悪化してしまった。店舗の改装だけでは低品質という印象や“オワコン感”を払拭(ふっしょく)できなかったのであろう。ピーク時から縮小に転じたブランドは、飲食や小売など業界問わず一般的に回復が難しいとされており、かっぱ寿司も抗えなかったようだ。

はま寿司が提供するキッズメニュー「はまっこセット」の一部(同前)

「1皿100円」は残り続けるのか

 最後に、今後の戦略という視点で両者の違いを比較してみよう。かっぱ寿司は今後、東京・大阪・名古屋と三大都市圏の繁華街や駅前への出店を強化する姿勢を見せる。ただし、不採算店の閉鎖も並行する模様で、少なくとも25年3月期まで事業規模は横ばいになると同社は予想しているようだ。

3貫110円で「シャリのみ」も販売しているかっぱ寿司(出所:かっぱ寿司公式Webサイト)

 一方、はま寿司は北関東を中心にドミナント出店を進める。現状は東京・神奈川・埼玉それぞれに40店舗以上を構える半面、栃木・群馬は10店舗前後と北関東地域にまだ出店の余地がある。その上でゼンショーグループが強みとするMMD(マス・マーチャンダイジング・システム)を生かす。原材料の仕入から食品加工・物流・店舗での販売までをゼンショーグループとして担うことで、店舗数や各業態店の共通原料が多いほどコスト面で有利に働く可能性がある。「規模の経済」を武器に、低価格を維持する方針だ。

 直近の業績では、かっぱ寿司運営元のカッパ・クリエイトが24年3月期に営業利益黒字化を見込んでいるが、勢いがあるのははま寿司だろう。円安も続く中、かっぱ寿司が現行の価格に耐えかねて値上げに踏み切る可能性も低くないはずだ。100円皿の我慢比べで最後に残るのは、はま寿司だけになるかもしれない。

【2023年11月17日午前11時、日本ソフト販売のデータに関する表記を一部修正しました】

著者プロフィール

山口伸

化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.