庶民派・高級派で二極化? オーケー出店で「銀座の格が落ちた」と考えるのは早計なワケ長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)

» 2023年11月30日 10時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

4万人超が住む一方で、スーパーが不足していた

 顧客層を観察していると、特に午前中はリタイア後の高齢者が目立つ。近隣のタワマンに住んでいるような高収入らしい30〜40代、近隣に勤めているビジネスパーソン、インバウンドの観光客もいないわけではないが、さすがに午前10時過ぎに弁当やピザは買いに来ない。

 銀座から徒歩圏の中央区内、銀座・築地・新富町・明石町当たりに長く住んでいる住民が利用している、ということなのだろう。中央区では京橋・日本橋・月島と3つの地域に分けて人口・世帯数を出しているが、11月1日時点で京橋地域には約4万3000人も住んでいる。

オーケーの代名詞「オネストカード」(同前)

 銀座には、新橋との境の南端にある施設・銀座ナインに肉のハナマサがあるが、これまではスーパーの空白地帯といえた。そこに構える肉のハナマサは肉のみならず、野菜や魚、加工食品、さらにお酒も豊富にそろえた1階と地下1階の2層の店だ。業務用ニーズの受け皿という側面もあって、かなり成功しているように見受けられる。

ギンザ9、肉のハナマサ

 新宿や渋谷にもスーパーはある。何も銀座だけ特別なわけでなく、生活者の日常を支える観点で、スーパーは当然必要だったのに、なぜこれまで十分になかったのかと、今更ながら思う。

 マロニエゲート銀座2から外堀通りを渡った向かいの銀座インズには、サイゼリヤ・ガスト・ケンタッキーフライドチキン・やよい軒・マクドナルド・ロイヤルホストなどがあって、庶民が普段使いできる飲食店はそろっている。有楽町駅も近く、駅前には吉野家がある。それなのに、スーパーだけがほとんどなかったのだ。

 考えてみれば、オーケーはこれまでも、みなとみらい・池尻大橋・田園調布といった比較的高収入世帯が多い地域でも成功してきた。銀座でも成功する素地はあったといえる。その理由について、同社の広報は次のように話す。

精肉売り場も充実(同前)

 「当社は特売を行わず、ナショナルブランドについては常に競合店に負けない価格で引き下げを行っている。しかし『安かろう悪かろう』ではなく、経営方針の通り、品質あっての価格訴求を追求している」(同社・広報)

銀座店は「ショールーム」か

 これまで、オーケーでは高田馬場店・千駄ヶ谷店・お台場店・浅草店、さらに5月に開店したJR田町駅付近にある札の辻店など、東京23区の都心部に近い場所での出店はあったが、銀座ほどの都心は初めてだ。同社広報は「オーケーの店舗がまだ近隣にない地域もある。銀座へ仕事や遊びで来られたときに、商品の高品質と安さを実感いただき、多くのお客さまに利用していただきたいと考えて出店した」と話す。

 多くの人の目に付きやすい銀座店は、オーケーのショールーム的な要素を期待しているとみられる。訪れた顧客には、実際に商品を手に取ってもらい、オーケーが掲げる 「高品質・Everyday Low Price」を実感してもらい、知名度と評判を上げて、未出店の地域の出店につなげたい意向だ。

オーケー銀座店

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