AIで成約率が7倍に――あるテレマ企業の実践事例 過去データ分析の自動化に学ぶ「成功ポイント」とは

» 2023年11月30日 10時00分 公開
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 AIで成約率を従来の7倍にした――こんな驚くべき成果を挙げたのは、顧客企業のコールセンター業務やセールス業務を支援するカスタマーリレーションテレマーケティング(CRTM)だ。

 AIで業務を効率化したい、業績を伸ばしたいと考えている経営者は多いだろう。それは大企業だけでなく、経営トップの「バスに乗り遅れるな」という掛け声でAIの導入を進める中堅・中小企業も増えている。

 しかし、AIを導入すればいま抱えている課題が解決するかというと、話はそう単純ではない。導入しても期待した成果が出ないケースもよくあることで、実はCRTMも過去に苦い経験をしていた。

 では、CRTMはAIをどのように導入し、どう使って成功をつかんだのか。AIで課題を解決し、売り上げを向上させる秘訣(ひけつ)を深掘りすると、大企業から中堅・中小企業まで広く適用できるヒントが詰まっていた。今回取材したのは、CRTMの植原大祐氏(代表取締役)だ。

photo CRTMの植原大祐氏(代表取締役)

成約率アップを追求 ヒントは外食チェーンにあり

 大阪市に本社を構えるCRTMは、約120社の顧客企業からコールセンターやテレマーケティング、セールス業務を受託し、約5000人のスタッフで運営している。かかってきた電話に対応するインバウンド業務を中心とするコールセンター事業者が多い中、CRTMは顧客から預かった架電リストを基に営業などを行うアウトバウンド業務で営業力や発信力を武器に結果を出し続けている点が強みだ。

 「ある通信事業者さまの業務では、問い合わせの受け付けだけでなく新規申し込みや追加注文、解約の翻意など、営業力やトーク力を必要とする対応で実績を積んでいます。多くのお客さまに信頼していただいています」(植原氏)

 CRTMが高い次元で営業力を維持できている理由の一つに、オペレーター業務のマニュアル化がある。約20人のチームを束ねるスーパーバイザーやマネジャーが、商品のメリットや料金の伝え方など架電時のトーク手法をマニュアル化。オペレーターはそれに従ってテレセールスをすることで、誰でも質の高い案内や営業ができるという仕組みだ。

 「外食チェーン店などでは、オペレーションをマニュアル化することで経験が浅いアルバイトなど『誰が作ってもおいしい味』を提供しています。当社もアルバイトやパート従業員が多いので、同じ手法で個人のスキルに過度に依存せずチーム全体の成果を底上げしています。このマニュアルは、常にPDCAを回して改良しており、成約率の向上を常時心掛けています」(植原氏)

photo CRTMのコールセンター

AIで「成約率が高いリスト」を作成 勘と経験からの転換を狙う

 電話対応のマニュアル化でオペレーターのスキルに頼らない業務体制を構築したCRTM。しかし、まだ属人的な業務が残っていた。それが架電リストの調整だ。同社は、顧客企業から預かった対象者リストの上から順に電話をかけるのではなく、成約率が高そうな対象者を絞り込んで架電している。その絞り込み作業において、リストの割り振りや選定といったスキルやノウハウが属人化していた。

 成約率に直結するだけに、かなりの人的、時間的なリソースを費やしていたリスト調整。その作業はスーパーバイザーやマネジャー個人の勘や経験に頼る部分が大きく、成約率に差が出ていた。そのため、リスト作成の効率化と高いレベルでの質の向上を模索し続ける日々だったという。

 そこで決断したのがAIの導入だった。CRTMは、過去の案件や業界別の傾向などさまざまなデータを蓄積していた。そのデータをAIで分析することで「成約率の高そうな対象者を狙い撃ちしたリストを自動で作成でき、効率が高まると考えた」と植原氏は振り返る。

AI導入→半年で成約率が約7倍に 「革命的」と評価

 こうしてCRTMが導入したAIツールが「dotData」だ。データ分析から洞察を導くまでを自動的に行える。さまざまなAIを試すも目に見える効果が得られず模索する中で、ビジネス関係にあった大塚商会から紹介されたのがdotDataだった。

 大塚商会がSIerとして中堅・中小企業を中心に提供しており、成功事例の説明を受けたことで検討してみることにした。営業力の強さに定評がある大塚商会が自社の営業部門にdotDataを導入して成果を出しているだけに、提案内容に説得力があったと植原氏は話す。

 dotDataの効果を見極めるために、2021年8月にPoC(概念実証)をスタート。顧客企業に許可を得た上で架電対象者リストをdotDataで分析し、スコアリングされたものから絞り込んでいった。保険と通信関連の3つのアウトバウンド用リストを作成して架電したところ、なんと半年後には通信会社のクロスセル(上乗せ販売)で従来の約7倍の成果を挙げるに至った。

 「7倍には驚きました。トライ&エラーの連続だったリスト作成にいきなり最終解が示されたわけですから、革命的であり衝撃以外の何ものでもありません」(植原氏)

photo

 従来の業務の成果を伸ばすだけでなく、新たなビジネスにつながる可能性もあるという。AIが確度の高いリストを提示すれば、顧客企業に「この業界ならこれくらいの成約率が見込めます」と自信を持って提案できると植原氏は目を輝かせる。

 オペレーション現場からも「全てのアウトバウンド業務に導入したい」という声が上がった。dotDataの仕組みがシンプルだったため、業務フローを変える必要がなくPoC担当者の負担が少なかったことも高評価だった。

 AI導入前は、担当者の経験則を頼りに地道にPDCAを回しながらリスト調整を繰り返していたが、上乗せできる成約率はごくわずかだったという。植原氏が「革命的」と評価したのは、まさに偽りのない本心だろう。

AI導入のつまずき CRTMの経験に学ぶ教訓

 dotDataで劇的な成果を挙げたCRTMだが、一度つまずいた過去がある。約4年前、別の企業に依頼してイチからAIを開発したものの、大きな成果につながらなかった。

 当時のAIは、成約率アップのために「この時間に」「このオペレーターが」「この人に架電する」という詳細な指示を出す高機能なものだった。ところが、これを現場業務に適用するのが簡単ではなかった。フレキシブルな時間で勤務するアルバイトなどを特定の時間に割り当てるのは難しい上に、さまざまなマーケティング施策を素早く横展開するCRTMの業務スピードにも対応できなかった。

 AIの提案に業務フローを合わせるのに苦労したこともあり、CRTMのビジネスには合わなかったと植原氏は語る。この苦い経験は、AIが高機能であればいいというわけではなく、ゴールの設定や仕様の設計に課題があると活用につながらないという教訓を与えてくれる。

 さらに、CRTMでAI導入を担当するメンバーはAI専任ではなく、日常業務と並行してプロジェクトに携わっていた。PoCや本番運用におけるデータの準備や打ち合わせなどに相当な労力を割いたものの満足な成果が得られないのなら、AIが根付かないのも無理はない。

 「社内に“やらされている感”が満ちていると感じ、現場へ大きな負担を掛けていると感じました。確かに成約率は多少上がりましたが、導入コストが高額で、経済的な合理性を見い出せず断念しました」(植原氏)

AI導入の成功 その要因とは?

 コスト面の課題や専門人材がいない状況などは、多くの企業に共通する悩みだろう。つまずきながらも、AIへの期待を投げ出さず、最終的にはdotDataで大きな成果を出したCRTM。その成功の要因はどこにあるのか。

 要因の一つは、やはりコストだろう。dotDataの費用は、最初に導入したAIの約10分の1だった。これは大きなメリットだ。さらに、現場の業務を変えずに導入できたことで人的リソースも割かずに済んだ。

 もう一つの要因は、最適なパートナーを見つけることに尽きると植原氏は言う。「dotDataをご提案いただいた大塚商会には、システムの構築からその後の運用サポートまでお願いしています。提案時から全体的な青写真を示してくれて、目指すゴールを決めてからデータの扱い方や学習モデルの構築、軌道修正の仕方など一つ一つ伴走しながら専門家にサポートしていただきました」(植原氏)

 どれだけ高い技術力を誇るSIerであっても、依頼企業のビジネスを真に理解していなければ有用なAIは構築できない。現場業務とシステム構築の間でスピーディーに擦り合わせながらAIのパフォーマンスを上げていく作業は、技術目線だけでは無理がある。

 大塚商会は技術目線ではなく現場目線で親身にサポートするのが特徴だ。その姿勢は、オフィスから経営に至るまで「まるごと大塚商会」を掲げる会社だからこそだろう。植原氏も「属人的な業務を効率化したいなどの課題があるのであれば、大塚商会に相談してみるといいかもしれません」と付け加えた。

photo dotDataの活用イメージ

中堅・中小企業向けの「dotData Lite」 目指すはAI内製化

 CRTMはすでにdotDataで高い成果を出しているが、その向上心は止まらない。現在はアウトバウンド業務以外にもAIを横展開するプロジェクトを推進している。そこで本格導入を検討しているのが「dotData Lite」だ。dotDataを中堅・中小企業向けに展開するために構成と価格を抑えたバージョンで、データアナリストなどの専門人材がいなくてもAIを内製化できるのが大きな特徴だ。

 dotData Liteは、表計算ソフトが扱える程度のスキルがあれば十分だと植原氏は説明する。実際に、顧客データベースを扱う部署に配属されて約1年の従業員が、大塚商会の講習会を受けただけで、dotData Liteを使って予測モデルの構築からAIのセットアップまで実行できたという。

 「簡単に扱えるなら精度が劣るのではないか」という疑問が湧く。しかし、dotDataが出力したリストとdotData Liteのそれを比較すると9割を超えるデータが一致したことで精度は問題ないと判明した。「dotData Liteは気軽に始められるので、今後はAIの内製化を積極的に推進します」(植原氏)

photo dotData Liteの導入イメージ

AI活用のアドバイス 「早く結果が出る」ことが大切

 AIの活用を精力的に続ける植原氏に、これからAIを導入する企業へのアドバイスをもらった。

 「AI導入につまずいた経験を踏まえると、早く結果が出ないと『AIを導入しなくてもいい』という空気が醸成されてしまいます。それをいかに打破するかが大切です。dotDataは、そんな空気を覆すインパクトが出ます」(植原氏)

 インタビューの最後に少し意地悪な質問を投げ掛けてみた――ChatGPTのように人間と対話できるAIが登場し、音声合成の技術も発達している。将来はコールセンターの業務がAIに代替されていくのではないか?

 「当社にとっては、逆にチャンスと考えています。当社の強みは単なる受け付け業務ではなく、セールスなどのアウトバウンド業務や営業力を必要とするインバウンド業務です。それはオペレーターの営業的な能力やセンスも必要とされます。その領域で生成AIが人間の能力を超えるのはまだまだ先ではないでしょうか」(植原氏)

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