そば和食「家族亭」がAIで売り上げ予測 店長の経験 vs. データ分析の結果に見る、役立つ“経営判断の材料”の作り方

» 2024年01月31日 10時00分 公開
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 AIで売り上げを予測し、原価や人件費といった費用をコントロールする――。こうした取り組みを通じて、迅速で適切な経営判断を下したいと望む小売業や飲食業の経営者は多いだろう。しかし、AIを十分に活用できるかどうかは未知数であるため、実践に移せないケースも珍しくない。

 その一方で、AIを活用した検証を着実に進めている企業も増えてきた。飲食店をチェーン展開する家族亭(大阪府大阪市)は、AIによる需要予測とコスト削減の効果を検証し、一定の手応えを得た。

 主導したシステム担当者は、「AIのことを知らなかったので、まずは使ってみようと思った」と肩の力を抜いた様子で当時を振り返る。

 家族亭のチャレンジを取材すると、企業が抱える悩みをAIによるデータ分析で解決するポイントが浮かび上がってきた。今回は、家族亭をグループに持つSRSホールディングスの市原悟史氏(情報システム部 情報システム課 マネジャー)にAIの検証の狙いと成果を聞いた。

photo SRSホールディングスの市原悟史氏(情報システム部 情報システム課 マネジャー)

店長がPCと格闘 「経験や独自の係数」で売り上げ予測も、正確性に課題

 家族亭は1947年に創業した老舗チェーンで、そばを中心とした和食店「家族亭」や「得得うどん」など130店舗を全国で展開している。

 順調に成長する中で、データ分析に着目したきっかけは「コロナ禍」だった。多くの飲食店と同様に、営業自粛や時短営業、酒類の提供停止などの要請に応じて、売り上げの傾向が急激に変化したのだ。過去の経験則や実績データが売り上げ予測の役に立たず、急激な環境変化に柔軟に対応して持続可能な経営戦略を展開する必要性を痛感した。

 家族亭では、地区の責任者や店長が売り上げ予測を算出して本部で取りまとめている。1カ月以上先の売り上げ予測を店舗ごとに算出するので時間がかかり、経営層に情報が届くころには予測データとしての鮮度が落ち、適切な経営判断が難しいという課題を抱えていた。さらに、予測データをタイムリーに見直しにくいという課題もあった。

 「店長の中には、接客や調理は得意でも、PC操作や数値管理が苦手な人もいます。そのため、客観的な数字やデータではなく、店長自身の経験や独自の係数に基づいて売り上げ目標を立てたり、前任者から引き継いだ“秘伝の計算式”を使って予測をしたりと各人のバイアスが入りやすい傾向がありました」

 前年同曜日の売り上げなど過去の実績を参照するのは簡単だが、その情報だけを基に予測を導くのが難しい。売り上げ予測の算出は、時にはPCと格闘することになる。そこで、AIを活用した売り上げ予測ができれば、店長は数値管理に悩む時間が減り、営業中の対応に集中できるようになる。飲食店の本質は接客サービスや調理であり、そのサービスレベルの向上に努めることこそが、飲食店の正しい在り方だと市原氏は考えた。

photo 家族亭の店舗イメージ

AIで売り上げ予測 食材費などコストの適切な管理へ

 経営判断に使うデータは売り上げ予測だけではない。特に飲食業では、売上高の大部分を占めるとされる「FLコスト」、すなわちFood(食材費)とLabor(人件費)をどうコントロールするかが、事業の成否を分ける。月単位の予算をもとに管理するが、原材料の高騰や人手不足などの影響で実情と乖離(かいり)する場合も多い。さらに、売り上げを正確に予測できないと、FLコストの管理が難しくなる。

 売り上げ予測を店長それぞれの手法に任せていた家族亭でも、同じ悩みを抱えていた。AIの活用を検討した最大の狙いは、このFLコストを的確に管理するために、その大本となる売り上げ予測を正確かつ迅速に算出することだった。

売り上げに関わりそうなさまざまなデータを使って売り上げを正確に予測できれば、FLコストも正しく算出できる。店舗の立地や規模の違いでその金額自体は異なっていたとしても、算出の手法さえ一貫していれば、実際の売り上げやコストに差が出た際、その差異要因を推測しやすい。もちろん、原材料の発注数やスタッフのシフトなども適切に管理できる。

 「AIの副次的な効果も期待していました。店舗の担当者がそれぞれの手法で売り上げ予測を立て、実績が懸け離れた場合、担当者や手法にフォーカスされがちです。しかし、AIの分析は第三者的な立ち位置で予測された物差しであり、特定の人物や予測手法に対する議論を省けて、要因特定のために考えを巡らすことができます」(市原氏)

POSデータなどを分析 表計算ソフトではなくAIを選んだ理由

 売り上げ予測やFLコスト管理の基礎になるのは、客数や売れた商品、個数、価格、時刻といったPOSデータだ。そのトランザクションレベルのデータ(レシートに記載されている1行1行の情報)を全て店舗で扱うとなると相当な量になる。

 「膨大なデータ量を毎日、短時間で正確に分析するには、AIが効果的だろうと感じていました。データ分析の効率と正確さを追求することで、経営層としても意思決定しやすくなります。同業他社さまも同様の施策を進めていると思うので、競争力を維持するためにもAIの活用に確り取り組みたいです」(市原氏)

 企業のデータ管理といえば表計算ソフトが思い浮かぶ。しかし、POSデータに加えて会員データや地理情報システム(GIS)データなど多種多様なデータを組み合わせて分析する場合、従来通り表計算ソフトを使って手作業で集計するのは事実上、不可能だ。

 「専用のデータベースや分析システムを構築する方法もありますが、時間とコストがかかります。一度システムを組んでしまうと外部環境の変化に柔軟に対応できないという問題もあります。そこで、AIを使った分析に注目しました」(市原氏)

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「総じて人がやるよりいい」 AIを使った結果は

 そこで市原氏は情報収集のために、大塚商会が2023年2月に主催した「AI×需要予測」をテーマとしたオンラインセミナーに参加。その内容が「売り上げ予測をしたい」という家族亭の目的と合致したことから、家族亭からオファーする形でAIの検証を加速していった。

 AIは、データ分析に強みを持つdotDataを選択。大塚商会との打ち合わせ後、数回のミーティングと並行して、家族亭が持つ各種データを共有するなどの取り組みを進めた。6月にdotDataの導入に向けたPoCのキックオフを実施し、8月中に必要なデータを一通り大塚商会に提出。途中で3回のレビューや追加データの提供を挟んで、10月末には最終レポートを受け取るというスピード感で検証を終えた。

 PoCによって、1週間先までの日別の売り上げ予測を算出できるようになった。市原氏は、最終レポートの結果は大いに満足できるものだったと評価する。売り上げ実績と従来の手法で算出した売り上げ予測を比べた場合と、dotDataの予測を比較すると、dotDataの方が約7割の確率で従来以上あるいは同程度の予測ができた。

 「ぶれ幅はdotDataの方が少なく、総じて人がやるよりいいという結果でした。使いこなしていけば、さらに精度を上げられると感じました」

PoCで得た知見 AI活用を加速するデータの扱い方

 PoCを実施したことで、AIを使いこなすためのデータの扱い方を理解できたと市原氏は振り返る。

 「POSデータは日別単位で管理しています。経理や財務の用途なら問題ないのですが、売り上げ予測に活用する場合、日別データよりも時間別データの方が分析結果の精度が高かった。今後dotDataによる分析基盤を構築するなら、トランザクションレベルまで落とし込んだ管理が必要だと分かりました。今回のPoCで得た知見の一つです」(市原氏)

POSデータの粒度は時間別が良いと分かった一方で、どの数字も「とにかく詳しければいい」というわけでもなかった。おおまかにカテゴライズした数字を投入したほうが、アウトプットの精度が良くなる項目もあった。例えば、店舗の座席数だ。最初は店舗の座席総数を学習させたが、思うような結果が出なかった。そこで座席数を「大、中、小」の3クラスに分類したところ、実績との乖離が小さくなった。

 天候のデータについても、降水量をそのまま投入するよりも「雨、曇、晴」といった粒度でラベリングする方が結果は良好だった。こうしたデータの扱い方に関する知見を得られたことも、PoCの大きな成果だ。

データを渡して「ほぼお任せ」 大塚商会の頼れる支援

 家族亭は、売り上げ予測のPoCで満足のいく結果を得られた。1週間先の日別の売り上げ予測を基に、FLコスト、つまり食材の発注数やスタッフのシフトも適正かつ効率的に管理できるようになる。

 同時に、dotDataの活用を深化させるために今後、取り組むべきことも明確になった。市原氏は、1カ月先の予測にもチャレンジしたいと意気込む。より先の売り上げ見込みが分かれば、経営戦略において多彩な施策を繰り出せるからだ。

 家族亭が成功したのは、PoCを提供した大塚商会のサポートの効果が大きい。市原氏は「実は、dotDataの準備を進める過程で他社のAIも検討しました」と明かす。大塚商会が提示した事例が家族亭の狙いと近かったこと、提案内容が具体的で信頼できたことなどから大塚商会をパートナーに選んだという。

 「経営層へのAI導入のプレゼン資料を二人三脚で作り上げた、そんなイメージです。キックオフ後は、密なコミュニケーションを保って近い距離感でプロジェクトを進められました」(市原氏)

 市原氏自身の手間が少なかった点も高く評価する。データを提供する際、「当社側で多少の成形をしましたが、後はほぼお任せでした。材料を渡して、『おいしい料理をお願いします』と待っていたような感じです」(市原氏)。

 家族亭が持っていないデータを使えたことも高評価の理由の一つだ。市原氏は「手元にないGISデータを大塚商会が提供してくれたので大変ありがたかった」と評価する。他にもAIに学習させるデータの前処理など、大塚商会の知見豊富なアナリストによる的確で手厚いサポートがあり、助かったと市原氏は評価する。

photo dotDataを使ったPoCのイメージ

“面白み”を感じて始めてみたPoC 「AI時代の企業経営を理解できた」

 取材の最後に、AIを試してみた経験を踏まえて、AI導入を検討している企業の担当者に向けたメッセージをお願いした。

 「これからの企業経営は、AIを軸としたデータ分析なくしては成り立たないと感じました。まだAIに触れていないのであれば、早々に試してみることを強くオススメします。『AIで何ができるの?』という興味や面白みを感じて実施したPoCでしたが、AIを活用した企業経営の道筋を理解できました。いま確実に言えることは、将来のAI時代に備えて社内データの管理をしっかりして、実運用に向けて検討を深めたいということです」(市原氏)

 多くの企業は「データはある」と言うかもしれない。しかし、それがAIやデータ活用に適した形式で管理されているケースは少ない。AIを試してみようと思ったら、まずはAIを生かした経営方法の模索やデータの見直しを進めたい。その一連の取り組みを、大塚商会なら現場目線の支援から経営コンサルティングに近い内容まで幅広くサポートしてくれる。AIで経営を進化させたいという読者は、大塚商会に相談してみてはいかがだろうか。

家族亭について

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