AIで販売データ分析 専門作業なしで「数万件の特徴量」抽出 アパレル企業が2人で挑んだAI検証の一部始終

» 2024年02月16日 10時00分 公開
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 DXの取り組みが遅々として進まないと危機感を抱いている経営者もいるのではないか。AIやクラウドサービスなどを導入して業務の変革や経営の高度化に挑もうにも、予算や時間、人材などのリソースが限られる中で「困難を極める」というのが偽らざる本音だろう。

 その一方で、できることを一歩ずつ進めている企業もある。さまざまなファッションブランドを展開するビギホールディングス(ビギHD)は、AIを使ったデータ分析に挑戦。「顧客生涯価値」(LTV)の向上を目標として、まずはAIによる分析の効果や課題を検証した。

 AIの検証を主導したのはグループで販売のデジタル戦略を担う井上仁介氏と、IT部門でグループのシステム企画立案と関連する各種プロジェクトをリードする猪野努氏の2人だ。

 DXの手段として、AIに対する企業の期待は大きい。ビギHDの取り組みをビジネスとIT、両方の視点で取材すると、いまAIの導入を真剣に考えるべき理由や、リソースやノウハウの不足が深刻な企業がAIを活用するポイントが見えてきた。

photo 左から、ビギHDの井上仁介氏(デジタル戦略企画部長)と、猪野努氏(システム企画部長)

アパレル一筋50年超 AIがDXを実現する手段に

 ビギHDの創業は1970年にさかのぼる。半世紀以上もアパレル一筋を貫き、現在はグループ内の6社の事業会社で40以上のブランドを展開している。「一人ひとりの個性や多様な価値観を尊重する」というグループの企業文化を背景に、ビギHDは顧客からも従業員からも信頼され、愛される会社を目指して、ITを活用した生産性の向上やデジタル戦略を含めてグループ各社を幅広くサポートする立場だ。

photo ビギグループは「オリジナリティーあふれるファッションとライフスタイルの創造を通じて、お客様の人生と社会を豊かにする」というグループミッションを掲げている

 ビギHDは、グループとしての注力項目の中に「デジタル化の加速」「システムと物流の高度化」を掲げ、顧客情報や売り上げデータなどの情報の統合管理やデジタル化の加速を据えている。これらの達成にデータを活用したDXが欠かせないのだ。

 「2018年ごろから『2025年の崖』などDXの波が大きくなり、ビギHDも対応することになりました。最終ゴールは2つあって、一つは基幹系のレガシーシステムからの脱却、もう一つは蓄積されたデータの分析と利活用を加速させることです。AIは、後者を実現する手段の一つになります」(猪野氏)

 DXに取り組む上でITシステム刷新は最低条件だ。ビギHDが目指す真の意味でのDX、つまりビジネスの変革を推進するためには、AIによるデータ活用が重要になる。

photo ビギグループの概要

AIでCRM施策を次の次元に高める 「顧客の買い回り」など分析

 ビギHDがAIを使ったデータ分析に踏み切った背景には、グループ内の事業会社が蓄積するデータをフル活用して、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)施策の効果を次の次元に高めてLTV向上につなげるという意図がある。

 AIの効果を検証すべく、ECサイト利用者の買い回りの状況と離脱率を分析した。この2つは顧客との関係強化やLTV向上の足掛かりになる。

 「新規顧客の獲得コストは、既存顧客の囲い込みにかかるコストの何倍にも上ります。ブランドを購入したことがあるお客さまに向けた施策を強化し、他社ブランドの買い回りの拡大やブランドからの離脱防止を図って長いお付き合いを維持する方が費用対効果の面で有利です」(井上氏)

 上記に加えて井上氏がAIに期待したのが従来のMAツール(マーケティングオートメーションツール)にはできない大規模な分析機能だ。一般的なMAツールはデータの分析を自動化できても、分析結果を読み解くのは人間だった。しかしAIなら分析結果の解釈もサポートしてくれる。AIの可能性を探ることも目的の一つに据えて、AIによるデータ分析の効果を検証した。

photo ビギHDの井上仁介氏

「ふぞろいなデータ」問題 データ分析の課題に直面

 一口にデータ分析といっても、手元にあるデータをポイッとAIに投入すれば万事OKというわけではない。ビギHDが直面した課題が「データの質」だった。同社はグループ中、5つの事業会社が10を超えるECサイトを運営しており、手掛けるブランドは40以上に上る。会社単位やECサイト単位で見ればデータが整っていても、グループ全体で分析しようとすると「ふぞろいなデータ」になってしまう。

 「各社でデータの定義が異なっている場合があり、割引販売のデータ一つ取っても、10%引きセールと正規価格での販売時にクーポンを使った買い物を同じ『セール売上』と定義していいものか悩ましいところです。データの定義が違えば、AIによる分析結果にも大きく影響するのではと悩みました」(井上氏)

データの質改善へ AI検証の結果に期待

 データの質に関する課題の解決策として井上氏が構想していたのが、データ定義の共通化やデータの統合管理化だ。それが実現すればグループ内のデータを一元管理できるので、データを活用する上で理想的な仕組みを構築できる。

 「われわれアパレル業は物事を数値で捉えるサイエンス的な視点だけではあまり意味を成さず、デザインやクリエイティブといったアート的な視点や思考も必要になります。アート的な思考から商品デザインやプロモーション施策を計画しますが、実施後に分かる数値結果を見ないで次の方向性を決めることはできません」(井上氏)

 今回取り組んだ顧客の買い回りや離脱率のAI分析は、データ定義の共通化や統合に向けた検討材料を集める狙いもあったと井上氏は話す。

AIでデータ分析 数万件の特徴量を抽出→導いた結果は?

 ビギHDがAIの検証を始めたのは23年の前半だ。大塚商会が提供するデータ分析AI「dotData」を利用して、大塚商会のデータサイエンティストと一緒に検証した。打ち合わせを重ねて23年3月に要件を定義し、4月ごろからデータを収集して大塚商会に提出。6〜9月にかけて顧客買い回りの分析をした後、離脱率の分析を11月まで実施した。

 特定の事業会社を対象にして、商品データや売り上げデータ、顧客データなどを分析したが、前述の通りデータの質がネックになってしまった。大塚商会と調整しながらデータの整形や取捨選択をして分析にこぎ着けた。

 顧客の買い回り分析をした結果、当初予期していなかった特徴があることが分かった。顧客は特定のECモール内であれこれ異なるブランドを無造作に買い回るのではなく、基本的には特定のブランドを購入し続けつつ、特定のタイミングでまれに別のブランドの商品を購入することが判明した。今後のLTV向上に向けた施策立案における有益な情報になると井上氏は説明する。

 離脱率についても同様で、特定の顧客属性に向けたプロモーション施策において傾向が顕著に表れた。想定とは異なる結果もあり、「思い込みを正してくれた」という点で価値ある成果を得られたという。

 分析結果を出力するに当たり、dotDataは投入したデータから結果に結び付く変数を100件近く提示した。「実際にはアプリケーション側で数万件の特徴量を抽出・解析し、有効と思われる特徴量を大塚商会が厳選して提案してくれた」と井上氏は驚きをもって解説した。

人間だけでは難しい分析と意思決定に、AIの客観性を加える

 dotDataによる分析結果を受け取った猪野氏は、数万件の特徴量を加味してデータを分析できるdotDataの客観性を評価する。

 「従来のシステムやマーケティングツールを使った分析は勘と経験に頼る領域が大きく、担当者のスキルに大きく依存していました。特に分析が難しいケースの場合は、『当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦』という状況の中で属人的な判断に頼らざるを得ず、担当者の分析にかかる作業量も心理的な負担も大変大きかったと思います。しかしdotDataは第三者の立場から意思決定を支える材料を提示してくれます」(猪野氏)

 ビジネスの方針や事業の計画を人間が作ると属人的な要素が入ってしまうので、過剰な期待や想定外の不満を生む要因になる。一方で、AIの分析は全員が客観的なものとして受け入れられるという利点がある。「人間の勘と経験を否定するわけではなく、AIが担当者の能力を補完する形で活用できると判明したことが大きな収穫です」(猪野氏)

 さらに、AIで何ができて、何ができないのかという「手触り感」のようなものを事業部門の従業員に共有できた。AIによるデータ分析の有用性を伝えられたことで、整ったデータの必要性や重要性を認識してもらうのにも役立った。今後、ビギHDのデータ活用を加速させる一因になりそうだ。

photo ビギHDの猪野努氏

分析も考察も大塚商会が手厚くフォロー ビギHD側は「2人で十分だった」

 dotDataによるデータ分析を振り返る中で、取り組みをサポートした大塚商会の存在の大きさが際立つコメントが随所にあった。

 「AIの活用は、データの加工や機械学習など専門的な領域なので当社の人材では足りません。悩んでいたところ、大塚商会が分析の進行やシナリオの作成など専門的な部分を引き受けてくれるということでパートナーに選びました」(猪野氏)

photo dotDataの活用イメージ

 取り組みを進めるとすぐに大塚商会の親身な姿勢が表れた。分析の目的やデータの解釈がブレないように、大塚商会の担当者がビギグループの事情や業務内容を深く理解することから始まった。アパレル業と一口に言っても、企業によって事業の中身が異なる上、担当者ごとにゴールも異なる。

 「販売視点の私とシステム視点の猪野、ここでも立場やミッションが違います。お互いの目的が異なるところからスタートした取り組みだったので、理解していただくのも大変だったのではないかと推察します」(井上氏)

 データを渡した後の分析は全て大塚商会が担当し、「思っている以上にやることが少ない」(猪野氏)のでビギHD側の作業は井上氏と猪野氏の2人だけで十分だった。結果が出た後は依頼者任せになるコンサルティング会社もあるが、結果の解釈や次のアクションを考えるなど「通常やっていただける範囲を超えたサポートをしてくれた」(井上氏)と感じられたという。

 2人が「まさに伴走者」だと口をそろえる大塚商会のサポートの裏側には、AIの可能性や魅力を知ってほしいという同社の思いがある。大企業だけでなく、中堅・中小企業でもAIを活用できる価格設定をして、専門的な作業を大塚商会が担い、ゴールの設定など最初期の工程から支援している。

AIを使って初めて見える景色がある 「とにかく試してみることが大切」

 インタビューの最後に、AIを使ったデータ分析の経験者としてのアドバイスをお願いすると、ビギHDの2人ともAIによる分析を経験して初めて見えてくる景色があると力説した。

 「AIを使うために人材をそろえて自社で完結するのはハードルが高いと感じるでしょう。しかし、大塚商会のdotDataのようにあらゆる面でサポートを受けられるサービスもあることを知ってほしいですね。それを踏まえた上で『とにかく試してみることが大切』というのがアドバイスです」(猪野氏)

 「従来の分析ツールでもCRM施策はできますが、AIがデータを解釈してくれるのは大きなメリットです。施策の成功を握るのは、担当者が気付いていない要素かもしれません。利用者の意識外からの知見が得られることはビジネスの優位性を高めます。これはAIを使ってみなければ実感できません」(井上氏)

 ビギHDは、dotDataの検証を通じてAIによるデータ分析に大きな手応えを感じたようだ。DXに取り組んでいる、またはAIの効果を知りたいという中堅・中小企業の経営者は「とにかく、試してみる」の精神で大塚商会に問い合わせてみてはいかがだろうか。

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提供:株式会社大塚商会
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