新任営業が陥りやすい状況としては「報告の仕組みが十分でない、あるいは理解されていない」パターンが比較的よくあるようです。右も左も分からない新社会人が報告のタイミングや形式を教わらないと実行できないのは当然です。ベテラン営業でさえも、転職してきたばかりで進捗報告に対する期待値が分からず、ついつい前職の通りに過ごしてしまっていることや、あるべき進捗報告の方法は理解しているものの、フォーマットや手順があまりに煩雑で億劫になっている場合もあります。
このようなケースでは、まず営業進捗報告に対する期待値を明確にすり合わせることに加え、営業自身が今の進捗報告の在り方をどう考えているかを聞き取ることが重要です。なぜならば、期待値を正しく伝えるだけでなく仕組みを改善するために動くこともマネジャーの職責であるからです。部下に効率よく心地よく働いてもらうことで、チームの力を最大限に引き出しましょう。
今度は若干厄介な、人間関係に絡む要因が背景にあるパターンです。営業成績が優秀な部下ほど、進捗を直前まで教えてくれないといった経験があるマネジャーも少なくないでしょう。いくら営業成果が上がっているとはいえ、マネジャーであるあなたが状況を一切把握していないままに突然受注の報告が上がってきたらどうでしょうか。納品に関わる他の組織に迷惑がかかりかねないばかりでなく、あなた自身の管理能力を疑われるかもしれません。
このようなケースでは、まずは腹をくくって自分自身を厳しい目線で振り返ってみることが大切でしょう。過去に部下のメンツを十分に立てられなかったこと、力になれなかったことはなかったでしょうか。例えば「まだ内緒ですが」と教えてくれた隠し手札の案件を、なんの気なしに口外してしまったり、相談されていた他部署との調整をおろそかにしてしまったり……。
このような心あたりがある場合には、まずは信頼を回復し「情報を共有する価値がある」マネジャーであることを認めてもらわねばなりません。最大限に信頼獲得に努めた上で、それでも言うことを聞かない場合にのみ、組織での上下関係やルールを使ってコミュニケーションするのが良いでしょう。
大変なことではありますが、これもマネジャーの職務と割り切ることも含めて、自分自身の心情的な抵抗感とも向き合いつつ彼らの力を引き出すように努めてみてください。
最後のパターンは、ビジネスモデルや社内組織の関係で営業が十分に情報を仕入れられていない状況です。例えば、PCや車、損害保険といった消費者に届けるまでに代理店を挟むようなチャネル営業がメインのケースや、営業とは別にBizDevが顧客に提案しているケースが該当します。つまり、営業の元に情報が十分に集約されず、関係者間で情報の非対称性が生まれてしまっている状態です。
4つの中で、最も改善が難しいのがこのパターンです。部下が実態を正しく認識できておらず、またその事実にすら気付いていないケースも考えられます。結果として、マネジャーに上がってくる情報の精度はさらに低くなる可能性があるのです。
「成り行きで集められる」範囲の情報で報告を上げることが常態化しているケースはままあり、そのような情報の粒度や精度、頻度では本来必要な営業管理が十分に達成できない状態もまた、同様によくみられます。人間は慣れてしまえば本質的な問題に気付きにくいもの、これまでの進捗報告のやり方に対して疑問を持つこと自体がだんだん難しくなっていきます。
もしマネジャーであるあなた自身が現状に課題を感じたならば、チームのリーダーとして部下を助け、情報収集の方法を改善する必要があります。組織外のステークホルダーから情報を集めることは容易いことではありませんが、仕組みやインセンティブといったハードな側面だけでなく、人間関係のようなソフトな側面にも目を向けつつこれまで手に入らなかった情報を集めるために手を尽くしましょう。
組織の問題に能動的に取り組むマネジャーの姿を見せることで、チームからの信頼感を高める効果も期待できます。
いかがでしたでしょうか。進捗報告が十分上がってこないとき、営業マネジャーは少なからずストレスや苛立ちを感じるものです。しかしここまでに記述したいずれのパターンでも共通して重要なのは、そのような心情的な要素を一旦脇に置いた上で冷静に状況を見極め、組織の成果を最大化するためにやるべきことを判断することです。
そういった意味でもマネジャーの仕事とは大変なものですが、この記事が少しでも力になれたなら幸いです。
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