新時代セールスの教科書

ITサービスの値上げラッシュ それでも顧客が離れない「米国流・営業スタイル」(3/3 ページ)

» 2023年12月15日 08時30分 公開
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費用対「効果」に向き合うカスタマーサクセスの考え方

 「ROI」「費用対効果」は、営業を考える上でとても分かりやすい言葉だ。「効果」が出るから「費用」が出せる。費用対効果が確約されるなら顧客も購買しやすい。

 そのため、営業としては「費用」が上がるなら「効果」の最大化、蓋然性にこだわりたい。この効果への向き合いが、バリューセールスの必要性が叫ばれる理由である。顧客への価値、効果を営業が伝えないといけない。

 極端なことを言えば、営業は詐欺師のようにプレゼンテーションし、顧客を欺くこともできた。使わない機能やアカウント、サービスなどを余分に乗せて売り上げを上げるようなこともあった。

 しかし、不況のシーンで求められる営業は効果にコミットする医者だ。顧客の悩みを専門家の目線で診断し、今はこんな状態なので、こうすると良いと最適な処方箋を渡す。顧客を診る、顧客を快復させるプロフェッショナルにならなければならない。プロとして顧客の効果に向き合うためには、カスタマーサクセスの考え方が役に立つ。詳細は、拙著「実践カスタマーサクセスBtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP)に記している。

 値上げは、契約後に価値を出し続ける(カスタマーサクセス)ための投資であり、値上げ分は効果に反映されると分かれば、費用負担に対する顧客の抵抗感も減らせる。営業は、効果を出すためのプロセスとその確実性を説明する方法を学ぶべきだろう。

 また、「費用対効果」が考えやすい価格設計にしていくという考えもある。企業は価格を何度も見直すのが基本だ。「価値」のボリュームが上がると、「費用」も上がるような価格設計が理想である。例えば、顧客や従業員など利用者数に比例して課金されるような従量課金プランなどが当てはまる。価格にこだわり、顧客目線で価格の合理性、透明性、説明のしやすさに向き合うべきだ。

 顧客が手元で計算して、「確かにこの値段だったら期待している効果が出て、良い取引になりそうだ」と納得できる必要がある。効果や価値の蓋然性、計算、プロセスを説明し、顧客を動かす──これが今の時代に求められる営業担当の姿になるだろう。

筆者プロフィール:藤島 誓也 株式openpage代表

ビズリーチにてカスタマーサクセス(CS)チームを立ち上げ後、2018年にopenpageを設立。

CSをデジタル化する「openpage」の製品提供をはじめ、CSの体制づくりのコンサルテーション、SNSでの情報発信、大型オンラインイベントの企画など、米国流のCSを国内で広く啓蒙。openpageではB2B取引の透明性(オープン性)に着目し、「セルフサーブで顧客が考えられる」デジタルセールスの体制構築を支援。営業トーク、製品機能、価格などすべてデジタルの文字情報として起こし、顧客に情報共有可能にしている。

著書に「実践カスタマーサクセスBtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)

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