ITサービスが、相次いで値上げに踏み切っている。今年の各社のIR発表から、不況の影響による打開策だと読み取れる。
顧客側に値上げを受け入れる金銭的体力があれば良いが、そうではない場合もある。他社サービス導入を見送る企業もあるかもしれない。
値上げに伴い、顧客の財布のひもは固くなる。そうすると、営業の難易度は上がる。生き残りのためにどうするべきだろうか。
米国では、ITサービスの解約をなんとCFOが率先して進めている。コストが高い、利用頻度の少ないものを一覧で洗い出し、「不要」と判断したものを上から順番に解約していっている。
さらに、既存の取引だけでなく、新規の取引も締め出そうとしている。甘い契約とならないように、ベンダーから受ける営業商談にCFOが同席することもあるそうだ。「無駄なものはいっさい契約しない」という強い姿勢を感じる。価値がないなら取引をしない。これは仕方のないことで、どの企業も生き残りに必死なのだ。
そうなると、営業は顧客との商談で「明確なROI」を示さなければならない。財布のひもは、きつく締められている。単に製品紹介を読み上げるような「プロダクトセリング」のスタイルだと話にならない。不況期の今は、顧客にとっていかに価値がある取引かを証明する「バリューセリング(Value - based selling)」が求められている。
バリューセリングとは、顧客にサービスのROIや価値を納得させ、商談を着地・クロージングさせる営業術を指す。ROIは費用対効果とも呼ぶが、このうち「効果」、つまりカスタマーサクセスの成功確率が高いことを訴求する。この説明や調整に、営業がコミットするということだ。
実際、米国では商談時に求められる説明工数が膨らんでいる。契約後にどうやったら効果が出るのか、どんな定量リターンが出るのか、という話まで営業が踏み込んでいる。製品機能をカタログ的に紹介するプロダクトセールスを取り止め、顧客の課題を本当に解決するソリューションセールスになろうとしている。
上っ面のトークではなく、細かな運用まできちんと営業が説明しきる。そうしないと契約につながらないからだ。値段が上がった分、セールスがその「対価」を説明できるように、営業提案の在り方を刷新する必要がある。この考え方は、日本の営業組織においてもそのまま当てはまるだろう。
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