なぜ「サマンサタバサ」はここまで追い詰められたのか 「4°C」との共通点スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2023年12月20日 08時26分 公開
[窪田順生ITmedia]

「高級化」と「希少性」を追い求める

 そう聞くと、「じゃあ売れなくなっても頑張って高級化すりゃいいのか」と思うかもしれないが、もちろんそういう簡単な話ではない。ナイキの場合、高級化に合わせて「希少性」をしっかり守っている。レアスニーカーだ。

 ご存じのように、ナイキのスニーカーはレアなモデルはプレミアがつくので、コレクターの間では数百万円の高額で取引されることもある。だから、ナイキのレアスニーカーが喉から手が出るほど欲しくてたまらないというファンもたくさんいる。そんな「枯渇感」こそがブランド価値を釣り上げていく、というのは多くのマーケーターが指摘するところだ。

(出典:ナイキ)

 例えば、デジタルメディア「DIGIDAY日本版」の記事の中で、デジタルマーケティングエージェンシーHugeで分散型コマースのグローバル責任者を務めるキム・グエン氏はこう述べている。(参照リンク

 『価格はたしかにそれを達成するためのひとつの方法だ。しかしナイキやイージーのようなブランドは希少性を活用して、似たような欲求やステータスを示す感覚をもたらしてきた。希少性は精神的近道として機能する。要するに私たちはレアだと認識されているものに高い価値を見出し、豊富にあると思われるものは価値が低いと考える』(GLOSSY編集部 22年4月21日)

 高級化と希少性。この2つを追い求めることは、並大抵のことではない。しかし、そんな困難な道だからこそ、それを突き進むときに、ナイキの「Just Do it」(やるだけ)というブランドアイデンティティーも生きている。アディダスやプーマよりも尖っているイメージが、さらにブランド価値を釣り上げているのだ。

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