人口も観光資源も十分なのになぜ? 大阪・金剛バスが路線廃止になった根深すぎる理由長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/6 ページ)

» 2023年12月21日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

人口もそれなり、利便性も高い、それなのになぜ寂れた?

 金剛バスはなぜ、突然の廃業に追い込まれてしまったのだろうか。

 富田林市役所によると、22年の人口は約11万人。玄関口となる近鉄長野線・富田林駅の1日の乗降客数は、近鉄によれば1万1142人(22年11月8日調査)だ。同規模な人口の大阪府松原市の中心駅、近鉄・河内松原駅の乗降者数は2万7550人(同)と、富田林駅の倍以上もある。富田林駅の乗降者数は、大都市圏にある市の中心駅かつ人口規模もそれなりにある割に、少な過ぎると感じる。

 現在の富田林駅前は、南口改札を出ると旧金剛バスのバスターミナル以外に、コンビニの「ローソン」、居酒屋の「鳥貴族」「魚民」、カラオケ「カラオケライブ」の入るビルが目立つ程度で、活気があるように見えない。実は歩いて1〜2分の至近距離に「ミスタードーナツ」や「関西スーパー」などの店もあるが、駅直結・隣接でないので、駅前がとても寂しく見える。

東口駅前にある店はほぼ、このビルのみ(同前)

 駅の逆側、北口は近鉄バスとコミュニティバスのレインボーバスが発着しているが、駅前はさらに寂しい。ところが北口も2、3分歩けば、家電の「エディオン」、スーパー「コノミヤ」などが入る商業ビルがある。駅の近くは商業地になっているのだが、全般にお店は駅よりも幹線道路の方を向いていて、富田林がクルマ社会になっていることを物語る。

駅前の風景(同前)

 近鉄に乗れば、長野線から南大阪線に直通する準急によって、30分ほどで大阪の中心部の一つである大阪阿部野橋駅に着く。しかし、市民には利便性がそれほど感じられていないようだ。また、富田林駅に発着する金剛バスは、河南町と千早赤阪村の中心部から鉄道駅を定期的に結ぶ唯一の公共交通だった。交通の要衝でありながら、その強みが生かされていない。

 何人かの市民に話を聞くと、金剛バスがカバーしていなかった駅の北側に、国道170号線新道(大阪外環状線)が通っていて「ドン・キホーテ」「ニトリ」「マクドナルド」などもあり、にぎやかなのだという。また「イオン」や「富田林病院」「PL病院」のような市民が利用する施設も、駅の北側にある。これは国道170号線新道のさらに西に「金剛ニュータウン」「金剛東ニュータウン」「パーフェクト リバティ(PL)教団 大本庁」があることと関係している。

 富田林の場合、駅から離れた郊外ロードサイドが商業地化していて、駅の周囲が衰退するドーナツ化が進んでいる。それとともに、幹線道路に店舗が無秩序に広がるスプロール現象が顕著となっている。クルマ社会の地方都市では、ありがちなケースの一つだ。中心市街地が空洞化してしまっては、毎日の買いものなどの所用に市民がバスを使わなくなる。

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