人口も観光資源も十分なのになぜ? 大阪・金剛バスが路線廃止になった根深すぎる理由長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)

» 2023年12月21日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

学生街の利点も享受できず

 富田林駅の隣にあり、市内で最も利用者が多い1万5049人(同)が乗降する近鉄長野線・喜志駅も、駅前は殺風景だ。同じく隣にあり、富田林市役所の最寄り駅で乗降客数6305人(同)の富田林西口駅も、駅前商店街は極めて小規模で栄えているとはいいがたい。

近鉄喜志駅。駅前のお店は、ほとんど見当たらない(同前)
富田林西口駅前の風景。市役所の最寄り駅だがお店はあまりない(同前)

 喜志駅からの金剛バス路線は太子町の中心部のみならず、同町の上宮太子高等学校、河南町の大阪芸術大学を通る。しかし、大半の学生はスクールバスを利用しており、金剛バスは両校のスクールバスの運行を行っていない。従って、金剛バスは学生を大量輸送する恩恵を受けていなかった。

 金剛バスは朝夕のラッシュ時には、通勤・通学でかなりの利用者がいたのは事実だ。しかし、駅前ににぎわいを創出する集客装置がないから、人々はただ乗り換えのために素通りするだけになっている。昼間にバスに乗る人は少なく、路線バス事業が苦しいのは容易に想像できる。

喜志駅前の大阪芸術大学・スクールバス乗降場。学生需要を獲得できていないのはもったいない(同前)

 同社・白江暢孝社長によれば、乗客数は13年度の約172万人から21年度には約106万人にまで減少が続き、歯止めが掛からなかったという。赤字になっても沿線自治体から補助金が入っていたものの、バスが老朽化しても買い換える資金はなく、運転手たちがやりがいを感じにくい環境になっていたのだろう。金剛バスは大阪近郊の大都市圏を運行しているのに「PiTaPa」「ICOCA」などの交通系IICを使えなかった。そこを改善するだけでも、もっと利用しやすくなったのではないか。

従来の上ノ太子駅前からの路線バスは廃止され、町の中心部まで行く路線を新設

人口は20年で15%減 PL教団のにぎわいも沈下

 金剛バスの苦境は、沿線自治体の人口減にも起因している。富田林市は今世紀に入ってから人口減に悩む。同市の公式Webサイトによれば、3月末の人口は02年に12万6400人とピークを迎え、そこから減少。22年には10万8514人にまで減った。20年間で約1万8000人、15%ほどの人口を失った。

街を見下ろす、高さ180メートルのPLタワー(超宗派万国戦争犠牲者慰霊大平和祈念塔)。撮影:筆者

 市内にはPL教団の大本庁がある。PL教団のユニークなところは、かつて敷地内で「PLランド」という遊園地を運営していたことだ。

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