人口も観光資源も十分なのになぜ? 大阪・金剛バスが路線廃止になった根深すぎる理由長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)

» 2023年12月21日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

レジャーランド・花火・野球がすごかったPL

 1957年にオープンしたPLランドでは、花見の頃に1万本の桜が咲き誇り、夏には2万人を収容するという関西最大規模の流れるプールが名物で、冬にはスケートリンクも開設していた。子どもたちが喜ぶ多くの乗りものがあり、温浴施設もあった。一大レジャーランドとして、市内に圧倒的な富と雇用をもたらしていたのだ。53年から開催していた「PL花火(教祖祭PL花火芸術)」も、日本屈指の巨大花火大会として人気を博した。しかし、コロナ禍で2020年に中止となって以来、開催されていない。再開は未定という。

日本を代表する花火大会の一つだったPL花火(出所:富田林市公式Webサイト)

 野球の強豪校としても知名度が高い。春・夏を合わせて37回も甲子園に出場し、優勝7回、通算96勝を上げている超強豪校だった。

 「KKコンビ」と呼ばれる、桑田真澄氏、清原和博氏はもちろん、現在の中日ドラゴンズの監督とヘッドコーチの立浪和義氏と片岡篤史氏、西武ライオンズの監督とヘッド兼打撃戦略コーチの松井稼頭央氏と平石洋介氏も、PL学園出身者と、OBたちの野球界での活躍は枚挙にいとまない。甲子園球場で披露する人文字と吹奏楽が融合した華やかな応援も、芸術的だった。ところが、近年は硬式野球部の生徒が集まらず、17年3月に大阪府高等学校野球連盟を脱退している。

 PL教団は、高校以外にも教育機関を展開している。そもそもPL学園には幼稚園・小学校・中学校・高等学校・衛生看護専門学校がある。PL病院という総合病院を運営し、地域の医療も担っている。つまり、遊園地・花火大会・学校・病院など、富田林を本拠とする企業体として強烈な存在感を放っていた。

野球の強豪校として一世を風靡(ふうび)したPL学園(出所:PL学園公式Webサイト)

 市の職員に電話でPLランドやPL学園の全盛時のことなどを話すと「そういう時代でしたね」としんみりとしてしまった。現在のPL教団は、3代目教祖の御木貴日止氏が20年に亡くなってから、4代目が決まらない状況にある。

 宗教学者・作家の島田裕巳氏が15年2月16日付『アゴラ』に書いた記事によれば、1990年のPL教団の信者数は約181万人だったが、2012年には約94万人まで半減していた。率先して街ににぎわいをもたらしてきた人・団体の衰退も、金剛バス問題の遠因だろう。

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