スピードある中国EV展開に対抗 スバル、日産、トヨタが新車開発改革で巻き返しへ(1/2 ページ)

» 2023年12月30日 09時11分 公開
[産経新聞]
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 中国の自動車輸出台数が2023年に日本を抜き初めて世界首位となる見通しとなったが、国内自動車大手各社は、新車の開発体制を見直して巻き返しに動いている。SUBARU(スバル)は来年1月に新開発拠点の運用を始め、順送りだった開発作業を並行的な新手法に転換する。トヨタ自動車や日産自動車は、研究開発の現地化の強化に乗り出した。中国の電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)など、新興メーカーのEVに最適化した迅速な開発・生産との競争が各社に変革を迫っている。

スバルは開発拠点新設

 スバルは国内製造拠点の群馬製作所(群馬県太田市)に開発拠点「イノベーション・ハブ」を新設した。2800人を収容できる地上7階建ての真新しい拠点は、広々とした吹き抜けのオープンスペースや事務フロアにも車両を持ち込める設計が特徴。開発や製造部門、部品取引先なども含めて、車づくりに携わる人が一体的に業務をすり合わせて作業を効率化する。

photo SUBARUが新設した「イノベーション・ハブ」の外観=12月14日、群馬県太田市

 従来の新車開発は一つの作業の完了を待って次の工程に移る順番待ちだったが、試作開発や製造などが並行的に取り組む作業スタイルに変えることなどで、従来のガソリン車に比べて開発期間の半減を目指す。

 10月には開発試作機能の一部を製造部門に移管する組織改革を実施。約300億円を投じた新拠点は、組織だけでなく職場環境も変えることで、社員の意識から変革を加速させる仕掛けだ。綿引洋常務執行役員技術本部長は「世界最先端になりたい」と、EV専業を上回る効率的なものづくりの実現へ意欲を示す。

想定を上回るスピード

 エンジン車開発を中心としてきた日本メーカーに対し、米テスラやBYDなど新興メーカーは電池やソフトウエアが軸のEV開発で先行。特に中国勢は「知能化」と呼ばれるIT領域などで想定を上回るスピードで進化していると国内大手の首脳は口をそろえる。

 このため、トヨタは中国最大の研究開発拠点の人員体制を強化し、拠点の名称を「トヨタ自動車研究開発センター」から「トヨタ知能電動車研究開発センター」に変更。グループのデンソーやアイシンの技術者も開発に参加する体制を整えた。日産も北京市にある中国の名門校の清華大と共同研究センターを設立し、来年からEV関連や現地の若年層への効果的なマーケティングなどの分野で協力する。日産は、中国合弁の東風汽車有限公司が11月に現地開発EVの積極投入や市場変化のスピードに対応した研究開発を推進する戦略も打ち出した。

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