マツダの「EV」に試乗希望殺到、“眠れる獅子”ロータリーエンジンが咆哮(3/3 ページ)

» 2023年12月31日 16時02分 公開
[産経新聞]
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「壁取り払う」役割

 ロータリーEVには、マツダの電動車戦略の基本的な考えが反映されている。

 同社の説明によると、車の所有者が平日、運転するのはほぼ100キロ未満。たまの休みの日に遠出するというのが一般的な使い方だ。電池での航続距離は107キロで、通勤や買い物などの普段使いは電池によるEV走行でこなし、遠距離のドライブは発電しながら走行することを想定している。燃費から逆算すると、フル充電・ガソリン満タンで約800キロを走破できる。これがプラグインハイブリッド車の強みだ。

 一方、電池とモーターだけで走るEVには「電欠」で走れなくなる不安がつきまとう。また、MX−30のEVモデルがプラグインハイブリッド車であるロータリーEVより30万円近く高いように、電池のコストがEVの価格を押し上げている。現在の電動車を巡る状況の中で、マツダの現実的な“解”が、このロータリーEVだというわけだ。

 中井英二執行役員は、「電動化の取り組みは加速させるが、バッテリーEVに関して、マツダはフロントランナーにならない」と言い切る。2030年までの電動化の進展を3つに分け、電池への投資も視野に入れたEVの本格導入は28(令和10)年からの第3フェーズだとしている。その頃には、電池の性能向上・コスト低下を含め、EVに関する技術が成熟するとともに、マツダの開発態勢も整うとみているようだ。

 ロータリー搭載車の復活には、思わぬ効果もあった。マツダの担当者によると、所有車の整備などで販売店を訪れた顧客が次々と、ロータリーEVに「試乗したい」と要望。足もとで約8割の来店者が試乗しており、これは驚異的な比率だ。エンジンにこだわるマツダのユーザーだけに、電動車に対する心理的な“壁”を持っている人も多いとみられるが、「ロータリーEVへの試乗で、そうした壁が取り払われる。マツダの電動車に初めて触れる機会になっている」(同社)という。

 ロータリーエンジンという重要な“資源”を有効活用するマツダ。もっとも、独自の電動車戦略の成否が分かるのはこれからだ。(高橋寛次)

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