なぜ休日に業務連絡? 「つながらない権利」法制化の前に考えるべきこと働き方の見取り図(3/3 ページ)

» 2024年01月04日 08時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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「時間外でも応答するのがプロ」は時代錯誤

 次に、社員が自律的に業務をコントロールできるようにすること。業務の全体像を把握しているのは上司だけで、指示があるまでその日の業務の優先順位すら自分で判断できないような他律的マネジメントでは、社員は自力で業務に目途をつけられません。すると自分が帰宅し休んでいるうちにどんな業務が増えているのか予測しづらく、休日を迎えても「休んで大丈夫だろうか」と不安を抱えてしまいます。

 事前に誰がどの仕事をいつまでに行うかを明確にし、社員が自分の担当業務をコントロールできる自律的マネジメントに切り替えれば、社員は自身の業務の全体像を把握した上で、業務に支障が出ないよう目途をつけながら予定を調整できます。すると、自分が休んでいる間に想定外の業務が発生しているのではないかという不安を回避しやすくなり、想定外の業務が発生して勤務時間外に連絡を受けなければならない緊急事態も発生しにくくなります。

写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 最後に、リアルタイムにこまめな勤務記録をつけて給与を支払うこと。上記2点を守っていたとしても、緊急事態が起きる可能性をゼロにすることはできません。

 そうして致し方なく勤務時間外にやりとりが行われた場合、それが数分であったとしても、発生した時間は勤務時間です。それらをリアルタイムに細かく記録しておけば、タダ働きになる事態を防ぐことができます。

 いまはテレワークが珍しくなくなりました。職場に出社しなくても働くことができます。それは言い換えると、いつどこにいても職場にいるのと同じ状態ということでもあります。どれだけ忙しくても、職場から一歩外に出れば仕事と完全に切り離された時代は過去のものとなりました。

 しかし、“職場と常時つながっている”ことは、いつでも働かせられるという意味ではありません。勤務時間外に働くか働かないかを選択する主導権は社員にあります。それを「勤務時間外でもすぐに応対するのがプロの心意気だ」などと社員に求める職場は、私的時間の侵害を推奨していることになるのです。

 「つながらない権利」とは、新しい権利を付与するものではなく、全ての社員が既に備えている権利であり、職場が社員に業務連絡できるのは勤務時間だけ、という原則を再認識するための標語のようなものと捉えた方が良いのかもしれません。

 そんな原則が抜け落ちた職場が多いのであれば、日本でも法制化を進めてより強力に啓発する必要が出てくるでしょう。

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