「吉祥寺」「湘南」「軽井沢」どこからどこまで論争 お店や施設を可視化してみたデータに隠された真実(2/4 ページ)

» 2024年01月05日 09時00分 公開

「湘南」とつく市区町村が存在したことはなかった?

ビジュアルでわかる日本』(にゃんこそば、宮路 秀作/SBクリエイティブ)

 明治以降、保養地、別荘ブームに乗って相模湾沿いの開発が進んでいくにつれて、「湘南」というブランド地名が西へ東へと広がっていきます。さらに昭和に入ると、横浜市と横須賀市、逗子町の間に湘南電気鉄道(現在の京急)が開業し、高度経済成長期以降には、三浦半島や藤沢の内陸にも湘南を冠した新興住宅地が拓かれました(例:湘南鷹取、湘南桂台、湘南台、湘南ライフタウン)。

 これまで、いわゆる湘南エリアに湘南とつく市区町村が存在したことはないのですが(※)、それゆえ、「湘南」という地名の定義が時代の流れに合わせて拡大解釈されてきたとも言えるでしょう。もはや、地名の由来がどこかに飛んでいってしまったような状態ですが、それが許されるぐらい、神奈川(ほぼ)全域が海と日差しに恵まれた「湘南らしい地域」なのだと思います。

(※)明治から昭和中期にかけて、現在の相模原市緑区の山間部に津久井郡湘南村が存在しました。ただし、相模川(別名:湘江)の南にあることにちなんでおり、いわゆる「湘南エリア」とは無関係と考えられます。

「湘南」と「相模」はどちらが多い?

 神奈川県に広がるもうひとつの愛称地名、ブランド地名に「相模」があります。令制国(律令時代から明治初期までの行政区分)のひとつ、相模国が広域地名、愛称地名として残ったものです。

 「相模」がつくお店や施設を地図にすると、神奈川県の県央、県北地域に印がたくさんつきました(図2)。湘南ほど広範囲に広がっているわけではありませんが、こちらもなかなかの存在感です。

 各地域で「湘南」と「相模」、どちらが多いのかを比べてみると、おおむね相鉄線のあたりに分水嶺(2つの“流域”をへだてる尾根)があるようです(図3)。

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