攻める総務

6年前に「社員寮」を建てて、どんな“効果”がでたのか 50%→0%の数字に驚き水曜日に「へえ」な話(1/5 ページ)

» 2023年11月15日 08時30分 公開
[土肥義則ITmedia]

 30年ほど前の話である。筆者の同級生は大手スポーツメーカーから内定をもらえたので、ものすごく喜んでいた。ところがである。入社前の説明会を受けて、その同級生は「働きたくなくなった」というではないか。当時「大企業で働けば、将来は安泰」などと言われていたのに、なぜ落ち込んでいたのか。

 話を詳しく聞くと、人事から「独身寮に入らなければいけない」と言われたようで。しかも寮は2人部屋で、30代後半のおじさん……いや先輩と暮らすことが決まっていたそうだ。最後にその同級生は、遠い目をしてこのように語った。「オレ、この会社でやっていけないかも」と。

社員寮が減少している(画像と本文は関係ありません。出典:ゲッティイメージズ)

 今回のコラムは「社員寮」の話である。その昔、「会社の寮」といえば、安く生活できるものの、建物はボロボロ。規則は厳しくて、プライベートなんてないといったイメージが強い。大企業を中心に共同生活の場を提供しているところが多かったが、いまはどうなっているのか。

 国土交通省のデータを見ると、社員寮は減少していて、1993年は14万件を超えていたものの、2011年には7万件を切るほどに。四半世紀の間に、半分ほどになったわけだが、その理由は大きくわけて2つある。1つは、バブル経済がはじけて企業が建物を維持できなくなったから。もう1つは、時代に合わなくなってきたから。

 ワークライフバランスや働き方改革などが叫ばれる前から、若い人がプライベートを重視していて、共同生活を敬遠する傾向があった。であれば寮ではなく、借り上げマンションに住んでもらう、自分で借りてもらう、実家から出社してもらう、といったカタチが増えていったのだ。

 こうした動きがじわじわ広まって、いまも継続中といったイメージが強い。というわけで、令和の時代に「新入社員=寮に入る」といった会社に対して、「何年前の話だよ。昭和かよ」「メリットなんてあるの?」などと思われたかもしれない。

 筆者もなんとなくそのようなイメージをもっていたが、ちょっと調べてみると、そうでもない事例が出てきた。いまから6年前に寮を建てたところ、離職率が劇的に減った会社があるのだ。大阪に本社を構える「三和建設」である。

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